本研究ではこれまでに、我々が独自に樹立したがん分子標的薬に対して種々の抵抗性を獲得した悪性化大腸がん細胞モデルを用いて、分子標的薬耐性化の分子メカニズムを明らかにした。解明した耐性化機序に基づき、食品機能成分(エピガロカテキンガラート及びアピゲニン)が分子標的薬マルチ耐性化に関与する種々のシグナル伝達分子群を抑制することでマルチ耐性化を解除できることを解明してきた。さらに、エピガロカテキンガラートとアピゲニンによるシグナル伝達分子群の抑制効果が長期間持続し、分子標的薬併用よりも優れていることを明らかにした。しかしながらその抑制期間にも限界があり2か月以上経過すると大腸がん細胞がエピガロカテキンガラートおよびアピゲニンに対して抵抗性を獲得してしまうことが解った。 そこで2022年度は、エピガロカテキンガラートとアピゲニンに対する抵抗性を解除できる方法を探索した。エピガロカテキンガラート抵抗性を解除できる方法として、エピガロカテキンガラートに加え3種類の主要緑茶カテキン類(エピガロカテキン、エピカテキンおよびエピカテキンガラート)を併用し検討した。その結果、併用期間が6カ月以上経過しても抵抗性は獲得されなかった。その分子機構の一つとして、エピガロカテキンガラート抵抗性の責任分子群(IGF1-R)をエピガロカテキン、エピカテキン、エピカテキンガラートが直接結合して阻害することが解った。アピゲニン抵抗性を解除できる方法としてケルセチンについて検討したが、アピゲニン抵抗性を解除することはできなかった。
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