研究課題
正常体重であるにも関わらず、肥満者のような健康障害を持つ者が存在する。この理由の一つに内臓脂肪の蓄積があり、その蓄積はサイトカイン等の生理活性物質を介して、様々な臓器機能障害に繋がると考えられている。一方、皮下脂肪には遊離脂肪酸の代謝や貯蔵庫としての機能があり、その減少は高中性脂肪血症や異所性脂肪の蓄積に繋がると考えられている。しかし、地域住民の疫学研究において内臓脂肪と皮下脂肪の生体影響を確認した研究は十分ではない。DXA法ではTrunk fat(内臓脂肪と皮下脂肪)とAppendicular fat(皮下脂肪)が精密に測定でき、それらの比(Trunk-to-appendicular fat ratio、TAR)は内臓脂肪の相対的存在量の指標となり得る。本研究組織では、2007年から芽室、喜多方、西会津、上越、三島、袋井、浜松、奈良、橿原、香芝、大和郡山、淡路、姫路、讃岐、宮古島において、地域在住の小児から高齢者7000名以上のTARに関するデータを蓄積している。また、調査試料には凍結血清も含まれており、関西医科大学の超低温冷凍庫で保管されている。本研究課題でも2019年度から2021年度にかけて、DXA法を用いた疫学調査を各地で行い、新たにTARに関する試料・情報を蓄積した。加えて、2022年度は小児の保存血清を用いてOmentinおよびTNF-aの濃度を測定し、TARとの関連性について検討した。なお、Omentinは皮下脂肪よりも内臓脂肪に多く発現し、種々の病態プロセスに抑制的に働くことが示唆されている。今回の検討の結果、Omentinは、TARと負の関係がみられ、同時に高感度CRPおよびTNF-aと負の関係がみられた。また、血管防御作用を有すると考えられているAdiponectinとは正の関係がみられた。なお本研究は、研究倫理委員会の承認に基づいて実施された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Environ Health Prev Med
巻: 28 ページ: 30
10.1265/ehpm.22-00279