研究課題/領域番号 |
19H04049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
立花 雅史 大阪大学, 薬学研究科, 特任准教授(常勤) (80513449)
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研究分担者 |
小山 正平 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教 (80767559)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MDSC / パルミチン酸 / がん免疫 |
研究実績の概要 |
これまでの検討により、パルミチン酸による骨髄由来免疫抑制細胞(Myeloid-derived suppressor cell; MDSC)の免疫抑制機能の減弱には脂肪酸取り込みトランスポーターとして知られているFAT (Fatty acid translocase; CD36)が重要であることを見出した。また、パルミチン酸をリガンドとする自然免疫受容体であるTLR (Toll-like receptor)2やTLR4のノックアウト(KO)マウスを用いた解析から、これらの分子の関与はないことを明らかにした。すなわち、細胞表面受容体(TLR2およびTLR4)からのシグナルの関与は低く、細胞内へのパルミチン酸の取り込みが、MDSCの免疫抑制機能の減弱には重要であることが示唆される。 前年度までに、パルミチン酸飼料の摂食によって、がんの進展が阻害されることを見出している。また、in vitroと同様に担がんマウスにおいてもMDSCの減少と樹状細胞(Dendritic cell; DC)の増加が起こることも見出している。次年度は、MDSCやDCの活性化状態の評価に加えて、T細胞やNK細胞などの数と活性化状態についてもフローサイトメーターを用いて解析する。また、CD36 KOマウスにB16-F10がん細胞を移植し、パルミチン酸飼料を摂食させることで、その抗腫瘍効果におけるCD36の重要性、すなわち脂肪酸取り込み過程の重要性を明らかにする。さらに、抗PD-1抗体治療に抵抗性を示すB16-F10担がんマウスに抗PD-1抗体を腹腔内投与し、パルミチン酸飼料摂食との併用効果について評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのTLR2 KOマウスを用い、骨髄細胞から分化誘導したMDSCの細胞表面分子の解析から、パルミチン酸によるMDSC分化阻害にはTLR2が重要である可能性を見出していた。ところが、MDSCの免疫抑制機能について検討したところ、パルミチン酸添加により、野生型マウスにおいてMDSCの免疫抑制機能は減弱したが、TLR2 KOマウスにおいても同様の現象が認められた。また、TLR4 KOマウスを用いた検討においても同様の結果が得られた。TLR2およびTLR4が機能を補い合っている可能性を考え、TLR2/TLR4 KOマウスを用いた検討を実施したが、パルミチン酸によるMDSCの免疫抑制機能の減弱が認められた。すなわち、本現象においては、TLR2およびTLR4のいずれも必要がないことが明らかになった。また、細胞表面分子発現(分化)と免疫抑制機能の制御は別のメカニズムが機能していることを明らかにした。 次に、脂肪酸取り込みトランスポーターとして知られているCD36について、同様の検討を行ったところ、パルミチン酸によるMDSCの免疫抑制機能の減弱が消失した。このことから、パルミチン酸の細胞内への取り込みがMDSCの免疫抑制機能減弱に寄与すると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
CD36 KOマウスを用いた検討により、脂肪酸の取り込み過程が必須であることを見出した。そこで、細胞内へ取り込まれた後のパルミチン酸代謝の重要性について検討を行う。また、CD36 KOマウスにB16-F10がん細胞を移植し、パルミチン酸飼料を摂食させることで、その抗腫瘍効果におけるCD36の重要性、すなわち脂肪酸取り込み過程の重要性を明らかにする。 前年度までに、パルミチン酸飼料の摂食によって、in vitroと同様に担がんマウスにおいてもMDSCの減少とDCの増加が起こることを見出している。そこで、MDSCやDCの活性化状態の評価に加えて、T細胞やNK細胞などの数と活性化状態についてもフローサイトメーターを用いて解析する。 抗PD-1抗体治療に抵抗性を示すB16-F10担がんマウスに抗PD-1抗体を腹腔内投与し、パルミチン酸飼料摂食との併用効果について評価する。また、別のがん細胞を用いた検討も行い、パルミチン酸飼料摂食による抗腫瘍効果が普遍的なものであるかを明らかにする。
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