研究課題/領域番号 |
19H04050
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
森山 英樹 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10438111)
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研究分担者 |
小澤 淳也 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 教授 (00435059)
新倉 隆宏 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (40448171)
前島 洋 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (60314746)
秋末 敏宏 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (90379363)
古和 久朋 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (60396728)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 老化 / 運動 / 運動模倣薬 |
研究実績の概要 |
老化の防止を目指すための運動の理論的基盤の構築と、その応用による運動模倣薬の開発を目的に、本年度は、運動機能に関わる筋・骨・関節軟骨・脳に対する最も効果的な運動量を運動の種類(有酸素運動・レジスタンス運動)別に検討した。老齢動物は若齢動物と比べて個体差が大きく、また運動の直接的な影響に老化の影響が加わることで、得られる情報がばらつき、複雑になる。これらを避けるため、先ずは若齢マウスを用いた。有酸素運動としてトレッドミル運動、筋力増強運動として梯子を登るラダー運動を採用し、運動回数は1回とした。筋では腓腹筋を対象に、トレッドミル運動とラダー運動それぞれについて検討した。トレッドミル運動では、筋代謝に重要なPGC1-αと酸化ストレスマーカーであるMDAを比較した結果、より高強度の運動が骨格筋の代謝に有効であることが分かった。ラダー運動では、筋肥大に重要なタンパクの合成および分解遺伝子の発現を比較した結果、体重の120%の負荷強度が骨格筋のタンパク合成を活性化することが分かった。骨では、脛骨近位骨幹端部の骨代謝遺伝子の発現を比較した結果、運動量の違いによる変化はみられなかった。関節軟骨では膝関節の軟骨基質代謝遺伝子の発現を比較した結果、8m/minの低強度運動が、中・高強度運動よりも軟骨基質の合成を促進することが分かった。以上の結果をもとに、運動の種類(有酸素運動・レジスタンス運動)別の筋・骨・関節軟骨・脳にとっての1回運動での最も効果的な運動量を同定した。有酸素運動とレジスタンス運動それぞれで、この最も効果的な運動をマウスに行わせた後、筋・骨・関節軟骨・脳を摘出し、マルチオミクス解析を行い、有酸素運動とレジスタンス運動の共通点・相違点と、筋・骨・関節軟骨・脳の連関を分析している。さらに、繰り返しの運動による最も効果的な運動量も探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有酸素運動とレジスタンス運動それぞれで筋・骨・関節軟骨・脳に生じるエピジェネティクスおよびプロテオームの変化が想定以上に膨大となり、意味ある変化を抽出するための分析に時間を要しているため、進捗がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
マルチオミクス解析を完遂し、運動の分子機序の全容を明らかにする。それをもとに、バイオインフォマティクスにより鍵となる分子を抽出する。そして、その分子機序の老齢での再現性を検証するために、老齢マウスに最も効果的な運動を行わせ、エピジェネティクスはバイサルファイト処理あるいはクロマチン免疫沈降後のリアルタイムPCR、リン酸化タンパク質はウエスタンブロッティングで確認する。アゴニストあるいはアンタゴニストとして、化合物ライブラリーでスクリーニングした低分子化合物と、既存の機能性食品と医薬品のなかから転用できるものを見出す。老齢マウスを対象に、これらの新規運動模倣薬とこれまでに報告されている運動模倣薬の適切な組み合わせと用量を絞り込み、有酸素運動とレジスタンス運動を合わせた効能を完全に模倣できる真の運動模倣薬を開発する予定である。
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