研究課題/領域番号 |
19H04051
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
岡村 裕彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (20380024)
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研究分担者 |
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20457229)
宝田 剛志 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (30377428)
吉田 賀弥 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (60363157)
池亀 美華 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70282986)
江國 大輔 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (70346443)
伊原木 聰一郎 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (80549866)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 歯周病原菌 / 細胞外分泌小胞 / Outer membrane vesicles / 肺 |
研究実績の概要 |
歯周病は,慢性炎症をともなう生活習慣病であり,歯周病原菌によって惹起される。歯周病による歯の喪失は食生活・社会生活に支障をきたし,ひいては全身の健康に影響を与える。歯周病の病態の悪化が糖尿病などの全身性疾患の重症化に関与することが明らかになってきたが,現在でも高齢者を中心に大多数の人々が何らかの歯周疾患を患っている。口腔は全身の健康状態を示す鏡であり,健全な口腔内環境を維持することは,全身の健康にとっても重要と考えられる。しかし,現状と理想の間には依然として乖離がある。この原因として,歯周病と全身性疾患の重症化を関連づける明確な分子生物学的根拠が乏しいことが挙げられる。我々は,これらの疾患を関連づける新たな因子として歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』に注目した。 当該年度は,1.歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』の生体内の動態と組織・細胞障害性を調べる。2.細胞外分泌小胞』に含まれる病原因子を同定し,その細胞障害性について調べることを目的とした。 歯周病原菌感染したマクロファージ由来の『細胞外分泌小胞』を標識し,生体内での動向を可視化した。『細胞外分泌小胞』は,肺を含む遠隔臓器に集積した。また,肺組織では急性炎症と思われる症状を呈し,その後コラーゲンの沈着が認められた。培養細胞を用いた実験により,『細胞外分泌小胞』は肺上皮細胞に対し炎症性反応に関わるシグナル伝達経路に影響することが分かった。回収した『細胞外分泌小胞』からタンパク質を抽出し,質量分析により解析したところ,菌固有のタンパク質分解酵素ジンジパインのほか,マクロファージの核内蛋白であるヒストンが含まれていた。以上の結果より,歯周病原菌はマクロファージの『細胞外分泌小胞』を介して細胞障害性因子を肺に到達させ,肺疾患の惹起と悪化に関与すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,4年をかけて以下の3つの点について研究を進める計画である。 1.歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』の組織・細胞障害性を調べる。 2.『細胞外分泌小胞』に含まれる病原因子を同定し,その細胞障害性について調べる。 3.『細胞外分泌小胞』内の病原因子と歯周病および全身性疾患の病態との関連性を調べる。 このうち,1.2については,実験のかなりの部分を遂行することができ,すでに論文投稿した(Seyama et al., Biochim Biophys Acta, 2020; He et al., Arch Oral Biolo, 2020; Guo et al., Cell Signal, 2020; Tanai et al,. J Oral Biosci, 2020)。本研究に関する学会などでの発表も国際学会を含めて多数行っており,成果公表も当初の目標を超えて行っている。
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今後の研究の推進方策 |
計画に沿った研究活動が行えており,今後も滞りなく実験を進める。現在は,歯周病と糖尿病・肺疾患との関連に着目した研究を行っているが,今後は,他の分野や領域の研究者とも共同研究を進め,胎盤・胎児の成長発育やアルツハイマー病などの脳疾患における歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』についても解析したい。また,複数のジャーナルから本研究に関するReview論文の依頼がきており,対応していく予定である。
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