研究課題
歯周病の病態の悪化が糖尿病などの全身性疾患の重症化に関与することが明らかになってきた。しかし,高齢者を中心に8割以上の人々が何らかの歯周疾患を患っており,深刻な国民的生活習慣病といえる。口腔は全身状態を示す鏡であり,健全な歯と口腔を維持することは,全身の健康にとって重要と認識されながらも,現状との間には依然として乖離がある。この原因として,歯周病と全身性疾患の重症化を関連づける明確な分子生物学的根拠が乏しいことが挙げられる。我々は,これらの疾患を関連づける新たな因子として歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』を見出した。本研究では,歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』に着目し,その成分と生体組織に対する障害性を調べ,歯周病および生活習慣病などの全身性疾患の早期診断への応用につなげることを目的とした。具体的には,1.歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』の組織・細胞障害性を調べた。2.『細胞外分泌小胞』に含まれる病原因子を同定し,その細胞障害性について調べた。3.『細胞外分泌小胞』内の病原因子と歯周病および全身性疾患の病態との関連性を検討した。我々は,本研究を通して,世界で初めて歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』を標識・可視化することに成功し,肝・腎・脳・肺など様々な臓器に移行することを見出した。また,歯周病原菌由来の『細胞外分泌小胞』は,1.肝臓に移行し肝細胞の糖代謝シグナルを阻害し糖尿病を悪化させること,2.肺の上皮細胞間の接着機構を破壊し細胞死を誘導すること,3.菌固有の病原因子である「ジンジパイン」を含むこと,を明らかにした。以上の研究成果により,歯周病原菌は,菌体から細胞外分泌小胞を放出することで,自らの病原因子を広範囲に拡散し,歯周組織や全身に障害を及ぼすことを明らかにした。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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