研究課題
体内のリン濃度は一定になるようにリン代謝調節ホルモンなどの作用でその恒常性が維持されている。このリン濃度は、乳幼児期には高く、成長するに従って低下する。本研究では、成長期や成人期におけるリン濃度のセットポイントを決定する因子を同定するとともに成長期の異所性石灰化抑制機構を明らかにすることを目的としている。異所性石灰化は老化関連病変の1つであり、生命予後を規定する重要な因子である。本研究を推進することにより、老化様病変である異所性石灰化を予防・治療するための新たな標的分子の同定と治療への応用のための基盤的な技術開発を目指すものである。令和3年度は、異所性石灰化抑制因子の同定を進めるため、DNAマイクロアレイやRNAseqを用いた網羅的解析を行なった。その結果、マウスの成長期と成熟期での血管平滑筋において組織非特異的アルカリホスファターゼ(TNAP)の遺伝子発現にリン応答性の違いが見られ、成長期と比較し、成熟期で発現の増加が認められた。血管平滑筋に対しTNAPの阻害剤であるレバミゾールを処理することで高リン処理による石灰化誘導の抑制が認められたことから、成長期ではTNAPの発現量が抑制されたため、高リン血症にも関わらず異所性石灰化が抑制されていると考えられた。本研究課題のこれまでの研究でTNAPの発現を制御するエンハンサー領域のSNPが血清リン濃度の決定因子の一つとなっていることを明らかにしてきた。高リン負荷に応答する遺伝子発現制御に関わるncRNAの網羅的解析については引き続き解析を行っているところであるが、石灰化の抑制と血清リン濃度の調節の両方にTNAPの関与が示されたことは重要な成果であり、体内のリン環境に応答するシステムとしてTNAPの発現調節系が働いていると考えられた。さらに、TNAPを標的とした治療により、異所性石灰化を抑制することができる可能性が示された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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