研究課題/領域番号 |
19H04054
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
二川 健 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (20263824)
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研究分担者 |
曽我部 正博 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (10093428)
東谷 篤志 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (40212162)
小林 剛 名古屋大学, 医学系研究科, 講師 (40402565)
平坂 勝也 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 准教授 (70432747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MAM / ROSシグナル / mitofusin2 / 尾部懸垂 |
研究実績の概要 |
高齢者の運動機能の低下(ロコモティブシンドローム)したヒトは、栄養素の代謝異常(メタボリックシンドローム)を併発し、さらなるQuality of Lifeの低下を招くことがわかってきた。“なぜ運動しないと代謝異常を引き起こすのであろうか。”筋が活動していないことを感知し、それを代謝に変換する機構が必要である。本研究では、この酸化ストレスの発生源がMAM上に存在するNADPH oxidase (NOX)であることを明らかにする。さらに、筋萎縮の新たな栄養学的治療法を開発するため、この酸化ストレスが、筋蛋白質分解だけではなく、糖や脂質の代謝異常も誘導する分子メカニズムを解明する。つまり、ミトコンドリア関連小胞体膜(MAM)による機械的ストレスの感知から、萎縮筋の栄養素代謝異常に通じるシグナル、いわゆる“MAM-ROS signaling”とも呼ぶべき新規の筋萎縮シグナルを同定する。1)MAM-ROS signalingの同定とロコモティブ症候群のMAM構造破綻:模擬無重力環境(尾部懸垂やクリノローテーション)や高脂肪食負荷は筋細胞内に酸化ストレスを惹起することを明らかにした。2)MFN2筋特異的ノックアウトマウス骨格筋のMAM構造とミトコンドリア機能:MFN2の筋特異的ノックアウトマウスを尾部懸垂に供し、後肢筋の組織化学的解析によりMAM構造を解析した。MFN2をノックアウトすることにより、筋内酸化ストレスの増大が観察され、模擬微小重力による筋萎縮がより増悪した。さらに、MAMは、一時的にその数が増大するもののの、数日後減少し、MAM構造が破壊されていることがわかった。現在、萎縮の増大した萎縮筋のメタボローム解析を行い、メカノシグナルとエネルギー産生系シグナルの接点を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MFN2の筋特異的ノックアウトマウスのコロニーが完成したので、順調にそのマウスを実験に供することができている。現在、様々な条件で飼育した上記マウスを、メタボローム解析に供し、代謝変動を網羅的に解析している。同時にMAM中のNADPH oxidaseの活性やMFN2とUCP3の発現を解析も行っている。興味深いことに、筋特異的ノックアウトマウスは、尾部懸垂負荷をかけなくても脂質代謝異常が見られる。つまり、ミトコンドリア関連小胞体膜(MAM)による機械的ストレスの感知から、萎縮筋の栄養素代謝異常に通じるシグナル、いわゆる“MAM-ROS signaling”とも呼ぶべき新規の筋萎縮シグナルが、小胞体膜上のNADPH oxidaseなどの蛋白質の修飾により引き起こされる可能性を証明できつつある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、ミトコンドリア関連小胞体膜(MAM)上のオルガネラが接触している限局された箇所に酸化ストレス産生(NADPH oxidase)システムが存在することを証明しつつある。その意義は、機械的ストレスの感知や筋萎縮の病態を明らかにする上で非常に革新的なものであると期待されている。すなわち、NADPH oxidaseを活性化する機序こそがメカノセンサーである。さらに、ウェスタン解析では、MAMに存在するNADPH oxidaseの分子量は心筋細胞に存在するNADPH oxidaseに比べ少し大きい。リン酸化やモノユビキチン化などの蛋白質修飾と考えられ、様々な制御機構の存在が示唆される。これら分子の解析をすすめ、メカノシグナルと栄養シグナルの接点をぜひとも解明したい。
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