研究課題/領域番号 |
19H04064
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
重本 和宏 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 副所長 (40284400)
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研究分担者 |
大村 卓也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40848420)
金 憲経 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (20282345)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サルコペニア / 筋萎縮 / 筋線維タイプ / 代謝変換 / サテライト細胞 / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
サルコペニアの発症前、すなわち筋力低下が起きる前から筋の質的変化が既に起きていることが予想されるが、その病態とメカニズムは未解明である. 本研究はそれらを明らかにして早期診断・予防・治療法の開発を目指すことを目標とする. サルコペニアの予防には適切な運動習慣と食生活が有効で、両者とも代謝活性の可塑的かつ律動的変化を誘導する. 筋代謝の可塑的変化は筋線維の質的変化(代謝変換)を誘導するが、一方で加齢によりその可塑性が徐々に失われることで、筋の機能低下からやがて筋萎縮が誘導されると仮説を立てた. そこで、我々は代謝の律動性が加齢、その律動性を解明するために代謝・収縮特性の異なる4種類のマウス筋線維タイプを全て異なる蛍光タンパクで生きたまま識別できるMusColorマウスの開発に成功した. さらに、MusColorマウスから採取した筋幹細胞(サテライト細胞)を使い代謝変換を誘導する分子を探索するMusColor技術を開発して、筋線維の可塑性を制御する生体内因子・薬物などを探索する新技術を確立した(日米欧特許成立). MusColorマウスを使い骨格筋線維のタイプ変換を誘導し、かつ加齢にともなって発現が変動する因子の探索を行っている. 特に生体内の因子はサルコペニアの診断に有用なバイオマーカーとして期待される. 本研究ではマウスの筋のミトコンドリアの加齢変化についても研究を行う. 加齢に伴う筋力低下および筋萎縮に伴う筋線維タイプ変化において、ミトコンドリアの形態と機能変化が伴うことが予想されるが、その病態メカニズムについては未解明である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から引き続き、生きた状態で筋細胞の代謝変換(筋線維タイプ変化)を蛍光イメージングすることができるMusColorマウスTMと代謝変換誘導分子を探索する新しい技術(MusColor技術)を使い代謝変換(筋線維タイプ変化)を誘導する生体内因子の探索を行った.候補因子について老化マウスを使い解析を行った. 今年度はサルコペニア(加齢に伴う骨格筋の萎縮および筋機能低下)の発症要因として、若齢群(6-8ヶ月齢)、中齢群(19-20ヶ月齢)、老齢群(29-32ヶ月齢)のマウスを使い骨格筋のミトコンドリアの形態および機能障害について解明して論文発表した(Fukunaga et al, BBRC 2020). 骨格筋は、酸化的代謝特性をもつ遅筋線維と解糖系代謝特性をもつ速筋線維から成る不均一な細胞集団であるが、加齢により変化する筋線維のタイプ単位のミトコンドリア形態および機能の加齢変化は不明な点が多かった. 特に遅筋であるヒラメ筋においては、これらのミトコンドリア形態の加齢変化と機能低下が筋重量減少に先立って起きることを示した. 一方、速筋の長指伸筋では加齢に伴うミトコンドリアの変化は顕著ではないが、筋萎縮が起きることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定どおり、MusColor技術を使い代謝変換を誘導する因子で加齢により発現が変動する因子の探索を続け、さらにこれまで発見した候補因子の解析を継続する. 加えて、今年度論文発表した加齢に伴う遅筋のミトコンドリアの形態変化と機能低下は酸化ストレスを伴う毛細血管の関与が考えられることから解析を進める.
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