研究課題/領域番号 |
19H04066
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西村 治道 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (70433323)
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研究分担者 |
ルガル フランソワ 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50584299)
森前 智行 京都大学, 基礎物理学研究所, 准教授 (50708302)
Buscemi F. 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (80570548)
小澤 正直 中部大学, AI数理データサイエンスセンター, 特任教授 (40126313)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 対話型証明 / 量子計算 / 計算量理論 |
研究実績の概要 |
本年度は,様々な対話的量子プロトコルで重要な計算資源となる量子通信量や量子もつれ(エンタングルメント)の観点から幾つかの成果を得ることができた.まず,マルチパーティパーティ計算の最も簡素な形である秘密同時メッセージプロトコルについて,量子もつれの存在が通信量を削減するようなプロトコルを等価性判定やAND関数といった重要な関数に対して構築することができた.また,通信計算量理論の枠組みにおいて2つの離散的な確率分布が近いか否かを判定する量子通信計算プロトコルが古典の場合より2次的に通信量を削減することや,そのプロトコルが漸近的に最良であることも示すことができた.新しい対話的量子プロトコルの構築についても,幾つかの結果を得ることに成功した.まずクライアントが本当に量子コンピュータを使用しているのかを検証する対話型プロトコルとしてBrakerskiらにより提案されたLWE仮定をもとにする対話型プロトコルを改良して,量子コンピュータが真に量子性を示すために必要とされる量子回路がより弱いもの(対数深さの古典回路を補助とする定数深さ量子回路)でも十分であることを示すことができた.またBroadbentとIslamが2020年に導入したcertified deletionと呼ばれる量子特有の機能を備えた様々な暗号プロトコル(公開鍵暗号や属性ベース暗号)を構築することにも成功した.量子情報理論に関する成果としては,量子アンサンブルの推測問題(guesswork)について進展を得た.一度に1つの状態しか問い合わせることができない量子アンサンブルにおいてアンサンブルの状態を正しく推測するために必要な平均推測回数の最小値を定量化して,一様な確率分布を持つ任意の量子ビットアンサンブルに対する解析解を含む有限の条件下での推測問題の解析解を導出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
様々な対話プロトコルについて数多くの成果を得て,その結果を理論計算機科学の重要な国際会議で発表することができている.また,量子情報理論に根差した研究についても物理や情報理論の高インパクトジャーナルで発表することができている.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き対話プロトコルについて量子特有の暗号プロトコルや分散計算的に有用なプロトコルの構築およびその計算限界について,量子計算量理論や量子情報理論の知識をもとに開拓してゆく予定である.
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