研究課題/領域番号 |
19H04074
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
野間 久史 統計数理研究所, データ科学研究系, 准教授 (70633486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ネットワークメタアナリシス / Evidence-based medicine / 高次漸近理論 / モンテカルロ推測 / 影響力解析 / 多変量メタアナリシス / 公表バイアス / 外れ値 |
研究実績の概要 |
世界規模で進む社会の高齢化による医療費の問題から、医薬品・医療技術の有効性・有用性の比較評価は極めて重要な課題であり、ネットワークメタアナリシスはそのための重要な研究方法となっている。本年度は、ネットワークメタアナリシスにおける外れ値の検出と影響力解析における実践的な方法論の開発に取り組み、従来の影響力診断の方法を、部分的なアウトカムの欠測を含む多変量モデルに拡張した新たな方法の開発を行った。これに付随して、開発した新規手法は、従来からのペアワイズメタアナリシスや診断法のメタアナリシス、加えて、多施設共同臨床試験や国際共同試験で用いられるマルチレベルモデルなどにも汎用的に用いることのできる枠組みに適用することができるため、汎用性の高い応用上の方法と計算技法を整備し、広く実践で用いることのできるソフトウェアの開発を行った。また、多変量メタアナリシスにおける公表バイアスの検出方法として、Eggerの公表バイアス検定を拡張した検定方法を開発した。特に、アウトカム間の相関をモデル化したセミパラメトリック有効な検定方法を開発し、これまでに用いられてきた複合尤度法による検定手法よりも、概ね高い検出力を達成することができることを示すことができた。また、試験間の異質性の評価において、近年、スタンダードな手法として普及している予測区間の構成において重要となる、変量効果の分布のモデル化について、最新の確率分布論の成果を用いた柔軟なモデル化の方法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネットワークメタアナリシスにおける先進的な方法論の開発に成功し、Biometrics誌などの国際一流誌に、順調に研究成果の公表を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までのネットワークメタアナリシスにおける外れ値となる試験の影響力を評価する方法の研究をさらに発展させ、機械学習の理論において開発されたロバスト推測の方法を応用した頑健な解析手法の開発に取り組む。 ネットワークメタアナリシスの推測・予測の方法については、モンテカルロ計算を必要としない、Kenward-Roger法に基づく新しい推測・予測の方法の開発に取り組む。 バイアスのモデル化・評価方法の研究においては、ネットワーク上のエビデンスの不一致性(inconsistency)の評価において、主要な方法のひとつとなっている、ランダム不一致性効果に基づく検定手法において、既存の検定手法は、我々のこれまでの研究により、多くの実践的な条件のもとでその妥当性を失うことがわかっている。その問題を解決するための新しいモンテカルロ検定を開発する。また、その多変量ネットワークメタアナリシスへの拡張へも取り組む。 加えて、従来のネットワーク上のエビデンスの不一致性の評価は、試験デザインと治療法の交互作用に基づいて行われる。この評価方法は、根本的にいくつかのプラグマティックな問題を孕んでいることを、我々のこれまでの研究によって明らかにすることができている。これまでに参画した乾癬のネットワークメタアナリシスを事例として、その問題点を明らかにし、またその解決策についての研究を行う。
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