研究課題/領域番号 |
19H04077
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
入江 英嗣 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (50422407)
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研究分担者 |
坂井 修一 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 教授 (50291290)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロプロセッサ / ハードウェア / コンパイラ / VLSI / オープンアーキテクチャ |
研究実績の概要 |
2019年度の研究成果は大きくi)コンパイラ基礎アルゴリズムの補完 ii)高性能OoOソフトコアの開発 iii)STRAIGHT実チップの製造の3項目に分けられる. i)コンパイラ基礎アルゴリズムの補完では,生存変数に対して参照可能距離が短い時のコーナーケースでも,正しく距離表現ISAコードを生成する基礎アルゴリズムを明らかにした.このアルゴリズムは,どのようなプログラムに対しても最も少ないスピル数でコード生成が可能なことを保証するものであり,既に提案済みの基礎アルゴリズム,冗長レジスタ移動削減アルゴリズムと合わせて,新しい命令体系の根幹をなすアルゴリズムである.これらのアルゴリズムが揃ったことにより,多くのプログラムを用いた提案アーキテクチャの性能評価がより現実的なものとなった.この成果は国内査読付き会議へ投稿され,最優秀賞に選ばれている. ii)高性能OoOソフトコアの開発では,FPGA上で動作するOoOSTRAIGHTコアを記述し,組み込みベンチマークを実行できるソフトコアを実現した.このソフトコアは,同パラメータで動作させている時点でも規模な高性能RISC-Vコアよりも高い性能を示しており,提案アーキテクチャの優位性をシミュレーションだけでなく,ソフトコア上でも同様に確認することができた.今後,このソフトコアにより最適なハードウェア構成の検討を加速させていく. iii)STRAIGHT実チップの製造では,まず第一弾となるSTRAIGHTチップ開発として,in-orderのSTRAIGHTプロセッサを0.13umプロセスにて製造した.現在,動作確認のための周辺ボード開発を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では,ケーススタディ的にベンチマークプログラムのコンパイルを一つ一つ行い,問題点を修正しながらコンパイラの完成度を高め可能ベンチマークプログラムを増やす方針となっていた.しかし,今年度,新にコーナケースに対処できる基礎アルゴリズムを明かにしたことで,対処療法ではなく,理論からコンパイラの完成度を高めることができた.また,OoOソフトコア上で組み込みベンチマークが動作し,将来のオープン化ソフトコアのプロトタイプを得る事ができた.さらに,当初計画よりも前倒しで実チップ化が行われ,今後のOoO試験チップの試作時によりスムーズな開発が可能となっている.
また,本研究に関連する技術として,メモリ性能を高めるためのマイクロアーキテクチャ技術の研究や,比較対象として標準的に用いることのできるOoORISC-Vオープンコアの開発を共同チームにて行い,それぞれ国際会議で発表しており,これらの成果により本研究のハードウェア開発が加速している.
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今後の研究の推進方策 |
コンパイラ実装を加速させるために,RISC-Vコードを変換してSTRAIGHTコードに変換するバイナリトランスレータの開発を,これまでのコンパイラ開発と並行して進めることとし,関連して東大塩谷准教授が研究分担者として参加することとなった.これにより,中間言語の改版に影響されずに開発を進められること,フロントエンドとしてgccの利用が可能になるなどの効果が見込まれる.
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