研究課題/領域番号 |
19H04088
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
日高 宗一郎 法政大学, 情報科学部, 教授 (70321578)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 双方向変換 / 漸進的双方向化 / データ変換 |
研究実績の概要 |
変換の漸進的双方向化に密接に関連するモデル変換分野における活発な研究者であるTisi氏およびJouault氏を招聘し、集中的な共同研究および議論を行なった。 Tisi氏とは、モデル変換言語のグラフ変換言語への部分翻訳による漸進的双方向化に関する共同研究及び論文共同執筆において、漸進的双方向化に必要なモジュール性のモデル変換リポジトリを用いた予備的定量評価方法の議論、評価適用、評価結果の正当性に関する議論、部分翻訳手法における単・双方向言語の出力分離可能性と双方向変換の性質に関する議論を行った。逆方向変換の結果単方向変換言語の出力に副作用があっても性質に影響しないことも確認できた。 また、代表者の主宰する基盤ソフトウェア研究室にて漸進性、モデル変換言語ATL、定理証明支援系Coq、およびそれらを組み合わせた組込型領域特化言語CoqATLに関するTisi氏の招待講演を開催した。 Jouault氏とは、Active Map、Operational Transformationに関する議論、状態ベース更新・変換のデルタベース更新・変換への帰着に関する議論、Active Operationにおけるコレクションの代数的性質、漸進的双方向化、データ流に分岐を持つ双方向変換の定式化、Active Operationを通じたconflictを含む更新伝播に関する議論、双方向変換の合成を用いた漸進的双方向化の実現方式に関する議論、ルールベースのモデル変換の合成の定式化に関する議論(非可換性の扱い等)、Well-behavedな双方向変換の合成に関する性質、デルタベース、非対称型双方向変換とその逐次・対面合成のAgdaを用いた定式化に関する議論を行なった。 Jouault氏の共同研究者Theo Le Calvar博士のModel Set Explorationに関する講演会も開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画通り、Active Operationおよび関連する分野の研究者として、モデル変換に関して活発な研究を行なっているTisi氏およびJouault氏を招聘し、集中的な議論が実現した。 議論を通して漸進的双方向化に関連する共同研究・論文執筆が進捗し、Active Operationをとりまく最新事情に触れるとともに今後の共同研究の題材も豊富にあることと共同研究の今後の具体的な進め方も確認され、有意義なものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
この研究を通して、どのような状況で漸進的な双方向化が可能なのか、さらに、変換を多数用いている一般の情報システムにおいて、漸進的に双方向変換を導入していくにはどのような理論的枠組、道具立てが必要かという根本的な問いに引き続き挑む。 2020年度は、まず申請者が応用分野の一つと位置付けているモデル駆動工学において変換における式の漸進的伝搬の仕組みとして提案されているActive Operationについて、2019年度に研究者を招聘して検討した既存の双方向変換の枠組みの適用可能性やActive Operationを発展させたActive Mapの双方向化に利用できそうなモジュール性、変換の定理証明支援系による定式化について研究を深めていく。 さらに、同じく研究者招聘により検討を進めた翻訳にもとづく漸進的双方向化を踏まえ、双方向変換と単方向変換のシームレスな統合のために必要な理論的条件や実装上の仕組みについて、モノイドの性質の活用等を念頭に引き続き考究する。 双方向変換自身の段階的な双方向化とあわせて、ラウンドトリップ性(Well-behavedness)についても、弱いものから段階的に強めてゆく方法を考究する。 2019年度同様の招聘や訪問による集中した対面での共同研究の期間が設けられることが理想であるが、COVID-19対策による往来の制限を見極めつつ、遠隔会議システムやチームコミュニケーションツール、分散ファイルリポジトリ等を活用した論文の共同執筆やソフトウェア、証明の共同構築を国内外の研究協力者とともに進める。
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