研究課題/領域番号 |
19H04096
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
松田 崇弘 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50314381)
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研究分担者 |
會田 雅樹 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (60404935)
塩田 茂雄 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (70334167)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラフ構造 / ソーシャルセンサネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究では,(1)SNSによるセンシングデータ観測機構の構築,(2)観測値と環境情報のマッピング手法の確立,(3)物理グラフ構造を考慮した環境情報推定手法の確立という3つの研究テーマに分けて研究を進めてきた. 研究テーマ(1)では, SNSのユーザ間の論理グラフ構造を用いて情報伝搬の仕組みを解明し,ソーシャルセンサネットワーク上の論理グラフ構造における情報伝搬モデルを構築する.2019年度の研究では,SNS上で発生するコミュニティの分極化やユーザ挙動の尖鋭化の原因となる論理グラフの構造変化をモデル化し,その状況で新たに出現するユーザダイナミクスについて詳細に分析した. 研究テーマ(2)では, SNS上で発信された情報から地理的に依存する環境情報を推定することを可能とするため,SNS上の情報から地理情報を抽出するための手法について検討する.しかし,SNS上で発信されているデータの多くはプライバシーの観点から地理情報を伴わない.この問題に対し,2019年度は,特にTwitterに焦点を当て,Twitterで得られる情報の特徴を(地理情報の有無にかかわらず)網羅的に分析した.また,データ発出元の相互位置関係を地理情報のないデータから推定する手法を考案し,その一次評価を行った. 研究テーマ(3)では,ソーシャルセンサネットワークにおける環境情報推定手法の基礎検討として,SNSで得られた観測値の地理情報が正確であるという理想的な状況で物理グラフ構造を考慮した環境情報推定手法について検討する.2019年度は地理情報とともに観測された環境情報より観測されていない環境情報をグラフ構造を用いて推定する環境情報マップ推定手法を提案し,その基本性能評価を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトでは,(1)SNSによるセンシングデータ観測機構の構築,(2)観測値と環境情報のマッピング手法の確立,(3)物理グラフ構造を考慮した環境情報推定手法の確立という3つの研究テーマに分けて研究を進めている. 研究テーマ(1)では,当初の目的であるSNSにおける論理グラフ上の構造変化のモデル化を行うことができ,さらにその状況で新たに発生したユーザダイナミクスについても解析することができた. 研究テーマ(2)では,SNS上の多くの情報はプライバシーの観点から地理情報を含まないという事実に対し,データ発出元の相互位置関係を推定する手法を提案し,その先のデータ発出元の位置推定を行う手法への発展につながる基礎を構築することができた. 研究テーマ(3)では,環境情報が得られる地理的な関係をグラフ構造で表現するという新しい手法を構築し,その基本性能評価により有効性を検証することができ,次年度の具体的な応用技術へとつなげることができた. 以上より,本研究は当初の目的通り概ね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究テーマ(1)では,2019年度に構築したモデルを発展させ,SNS上の尖鋭化したコミュニティから生じるエコーチェンバー現象などの特異なユーザダイナミクスの出現要因を検討する.また,これらの現象に対する対策技術についても検討する. 研究テーマ(2)では,2019年度提案したSNS上の発出データの相互位置関係を推定する手法を発展させ,データの共分散情報からデータ発出元の位置を推定する手法について検討する.また,位置情報がタグ付けされたツイートの特徴を詳細に分析し,その利用法について検討する. 研究テーマ(3)では,2019年度に提案した環境情報マップ推定手法の詳細な性能評価とともに,本手法の応用手法として,分散配置された小型基地局やドローン基地局による動的無線ネットワーク構築手法についても検討する. また,前年度はそれぞれの研究テーマ内での研究内容を確立するということに主軸を置いたが,今後は研究テーマ間の連携についても検討する.
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