研究課題/領域番号 |
19H04113
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村上 隆夫 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80587981)
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研究分担者 |
日野 英逸 統計数理研究所, モデリング研究系, 教授 (10580079)
清 雄一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20700157)
松田 隆宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60709492)
川本 裕輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60760006)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プライバシー / 位置情報プライバシー / 局所型差分プライバシー / メンバーシップ推定 |
研究実績の概要 |
本研究では,長期間にわたる時系列データ(位置情報,電力使用量など)や数多くの属性データ(年齢,結婚状況,収入など)といった大規模な,相関を持つパーソナルデータに対するプライバシー保護技術の研究を推進している.
令和二年度では,以下の成果を上げた. (1) 有用性,安全性,スケーラビリティの3つの観点で優れた特徴を持つ位置情報の人工データの生成法「PPMTF(Privacy-Preserving Multiple Tensor Factorization)」について,その安全性をさらに追求し,メンバーシップ推定攻撃に対する安全性と再識別攻撃に対する安全性の両方を持っていることを実験的に示した.本成果はプライバシー分野のトップ国際論文誌PoPETs'21に採択された.また,本成果に関して,Luebeck大で招待講演を行った. (2) 相関のあるデータとしてソーシャルグラフに着眼し,グラフ統計量(k-stars, triangles)を局所型差分プライバシー(LDP: Local Differential Privacy)を満たしながら推定する問題に取り組んだ.大規模なグラフデータに対して有効なアルゴリズムを提案し,推定誤差のupper-boundsとlower-boundsを示し,実験的に有効性を示した.本成果は情報セキュリティ分野のトップ国際会議USENIX Security'21に採択された. (3) 転移学習に基づく深層学習システムに対するプライバシーのリスク評価を行った.具体的には,攻撃者は転移学習を利用したメンバーシップ推定攻撃ができることを示し,その有効性を実験的に示した.本成果はIJCNN'21に採択された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位置情報の人工データの生成法「PPMTF」が持つ,メンバーシップ推定攻撃に対する安全性と再識別攻撃に対する安全性を示し,プライバシー分野のトップ国際論文誌PoPETs'21に採択された.また,グラフに対する局所型差分プライバシー技術を確立し,情報セキュリティ分野のトップ国際会議USENIX Security'21に採択された.さらには,転移学習のプライバシーリスクの解析の研究で,国際会議IJCNN'21に採択された.以上より,順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,LSHなどを用いて類似度の大きいデータを高精度に同一のバイナリ系列に変換した上で,差分プライバシーやその変形版などを満たすように加工を施す技術を確立する.また,グラフデータに対する効率的な局所型プライバシー技術も確立する予定である.さらには,大規模なパーソナルデータを基に,元データのプライバシーを強く保護したまま,コンテスト用の人工データを生成する技術について,その安全性と有用性を解析する予定である.
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