研究課題/領域番号 |
19H04126
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鮫島 俊哉 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00298192)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 計算力学 / 数値計算手法 / 振動学 / 音響学 / 楽器 |
研究実績の概要 |
本研究では,4年間の研究実施期間中に,いくつかの楽器について,1.振動・音響物理モデリングの精密化プロジェクト,2.数値解析の高精度化プロジェクト,3.新規楽器のデザインプロジェクトを実施し,それらのまとめとして,4.新規楽器のプロトタイプ制作プロジェクトを実施する計画としている。 ヴァイオリンについては,1年目に開発した,弓のダイナミクスを考慮した擦弦振動の解析手法を,さらに改良することで,計算手法の高精度化を図った。 シンバルについても,1年目に開発した,シンバル・ワッシャーとスティック/マレットのダイナミクスを考慮した振動解析手法を,さらに改良することで,計算手法の高精度化を図った。 これらにより,ヴァイオリン・シンバルについては,2のプロジェクトを実施することができた。 さらに,本研究で対象とする楽器として,新たにエレクトリックベースギター,スネアドラム,小鼓を付け加え,それぞれの楽器について,1.に着手した。エレクトリックベースギターについては,スラップ奏法を想定した物理モデルを提案,その支配方程式を構築し,端緒の計算を実施した。スネアドラムについては,スネアと呼ばれるキャリーヘッドに張られている螺旋状の金属のダイナミクスを考慮した支配方程式を構築,端緒の計算を実施し,加えて,スネアの形態を変えることで,新たな音色のスネアドラムのデザインを行った。小鼓については,ヘッドの不均一性・ケトル形状の不均一性を考慮した物理モデルの精密化を行うと共に,その支配方程式の数値解析手法として,高精度な数値解析手法であるスペクトル法(Spectral method)の導入も行った。 これらより,スネアドラムについては,1のプロジェクトに加えて,3のプロジェクトを実施することができた。また,小鼓については,1のプロジェクトに加えて,2のプロジェクトを実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画時においては,4年間の研究期間を通して,ティンパニ,ヴァイオリン,シンバルのそれぞれについて,1.振動・音響物理モデリングの精密化プロジェクト,2.数値解析の高精度化プロジェクト,3.新規楽器のデザインプロジェクトを実施し,それらのまとめとして,上記すべての楽器について,4.新規楽器のプロトタイプ制作プロジェクトを実施する計画を立てた。 令和2年度は,上記の楽器のうち,ヴァイオリンとシンバルについては,1.および2.を実施できた。 さらに,本研究で対象とする楽器として,新たにエレクトリックベースギター,スネアドラム,小鼓を付け加え,それぞれ1.に着手できた。スネアドラムについては,1のプロジェクトに加えて,3のプロジェクトに着手することができた。また,小鼓については,1のプロジェクトに加えて,2のプロジェクトに着手することができた。 これらのことより,対象とする楽器の種類の観点からは,当初の計画以上に進展しているものと自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,令和2年度に引き続き,それぞれの楽器について1のプロジェクトを実施して,その完成度を高めていきたい。 そして,満足のいく結果が得られた楽器から順に,2および3のプロジェクトの実施に移行していく。 これまで対象としてきた楽器の一部については,2のプロジェクトが十分に検討できていないものも残っているため,それにも注力していきたいと考えている。 さらに,それぞれの楽器ごとに構築した数値解析基盤を適用可能であるような,他の楽器が考えられるならば,それらについても躊躇なく対象とする楽器として付け加え,新規楽器のデザインプロジェクトのバリエーションを充実させていくことを考えている。
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