研究課題/領域番号 |
19H04127
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
今村 俊幸 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, チームリーダー (60361838)
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研究分担者 |
工藤 周平 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (50824421)
廣田 悠輔 福井大学, 学術研究院工学系部門, 助教 (60709765)
鈴木 智博 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70235977)
椋木 大地 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 研究員 (90742289)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高性能数値線形代数 / タスクスケジュール / 高並列処理 / 非同期・条件付・競争的タスク / タスク並列・データ並列 / 非同期 ・ 条件付き・競争的タスク / DAG / 数値計算アルゴリズム |
研究実績の概要 |
本年度成果は大きく2項目に大別される。 1つ目は「タスクスケジューリングの実装予備実験」である。疎行列直接ソルバ―において、タスク依存関係の記述と実行の制御、さらにメモリ依存性についてタスク管理と同等機能の必要性、条件設定の扱いを考慮した分岐タスクの記述可能性を確認した。さらに、タスク並列の観点で重要なvBatched方式でのBLASを用いて、スケジューラに負荷量情報を与えることに対する影響調査を実施した。利用言語・ランタイム・ハードウェアによるスケジューリング戦略の差異を自動チューニングや機械学習などにより吸収できる可能性があることが確認された。更に、GPUにおけるスレッドブロック間のタスク排他制御方式を実装した。本方式を、グローバルループ、条件分岐、さらにはDAGと連携させることで上位ソルバ実装につなげられる可能性の検討を開始した。 2つ目は「数値計算アルゴリズムにおけるタスク並列モデルの調査研究」である。まず、タイル分解方式のアルゴリズムにおいて、コストの重回帰分析を進めてスケジューラ連携の一例を示した。連立一次方程式求解における、不定値密対称行列分解・疎行列直接解法におけるLDL分解、GMRESの前処理へのタスク並列処理の適用についても昨年度より継続調査を進めている。更に、新しいタスク系列処理の例として、アンサンブルカルマンフィルタ処理中に現れる対称平方根の行列関数計算について、レゾルベント計算やタイル処理のタスク並列の検討を開始した。また、行列固有値計算の分割統治法のスレッド並列のスケジューリングについて、不均等分割化によって生じるツリー構造の非対称性や不均衡の処理系による改善やコストの事前推定方式について検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スケジューリングに対する調査並びに機能選定自体は順調に進んでいる。研究計画段階で想定した各種アルゴリズムの個別のバッチ処理・非同期タスク並列処理方式の検討など適切なレベルでの進捗が認められる。機能実装開始が本年度の目標ではあるが、コロナ禍の中で人的リソースを集中して進めることに大きな問題があったことにより、実装自体の進捗が想定通りでない分は否定できないが一定の進捗は認められる。昨年度、成果の公表に重点を置くことも目標としていたが、想定していた学会自体のキャンセルが続いたため、絶対的な対外発表数が昨年度よりも減少している。プロジェクト全体の合意事項として、本年度はコロナの影響も考慮して内作における作業を中心として、次年度においてより多数の対外発表の機会を見出すことで進めてきた。総じて、当初予定としていた内容については、十分に進捗が認められる部分が大勢的であるが、同時に成果公表が遅れている箇所もあることは認めざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、スケジューリング方式の調査、それを反映させたスケジューラプロトタイプの作成、数値計算ソフトウェアへの応用と評価を進める予定である。しかしながら、本年度のCovid19の影響は明らかな研究遅延部分としても現れている。幸いなことに、在宅勤務中の研究・開発・議論を効率的に進めるノウハウが蓄積されており、その経験を持って次年度は体制改善が期待できる。実施が困難な対外的発表については本プロジェクトが主体となったオンラインセミナーを開催し情報発信の場とすることを計画する。また、コード開発部分での実施が遅延している部分については、旅費に計上した予算を学生アルバイトの雇用・もしくはアウトソーシング等に流用することで、遅延改善を図る。
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