研究課題
階層構造を持つ凸最適化アルゴリズムを機械学習に効果的に応用するための基盤構築に取り組み、その成果を凸最適化理論の世界的権威(Bauschke等)が企画編集した研究書収録の査読付き招待論文(77頁)の形で世界に発信することができた。この論文には「非拡大写像の不動点集合上の凸最適化法(ハイブリッド最急降下法)」と「単調作用素の近接分解法」の融合による「階層構造を持つ凸最適化問題の解法」とその応用法を示したものであり、1995年以来の未解決問題「誤識別サンプル数を最小にする線形識別器の中から最大マージンを達成する特別な線形識別器を選択する問題」に対する実用的近似解法を与えることに成功している。なお、この方針を多クラス識別問題に拡張することにも成功しており、経験ヒンジ損失最小を達成する全ての多クラス線形識別器の中で、全てのクラス間マージンを一様最大化する線形識別器実現問題を世界ではじめて定式化し、その解法を実現している。その他にも「非負値成分制約を満たす超複素行列」の解集合を計算可能な非拡大写像の不動点集合によって表現できることを示すと共に、スパースな情報表現が求められる逆問題の切り札として注目されている「一般化モローエンベロープ型モデル」の解集合も計算可能な非拡大写像の不動点集合によって表現できること示し、各々の問題の最適解への収束が理論的に保証されたアルゴリズムの開発に成功している。さらに、複数行列の近似同時対角化問題を構造制約付き低ランク行列補完問題に帰着する新解法のアイディアを与え、その解集合が非線形写像の不動点集合によって近似できることを示している。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究プロジェクトは世界でも類のない研究課題であり、多くの数理的課題を1つずつ解決していく必要がある。2019年度には本プロジェクトの重要な数理的基盤の一翼となる基本的アイディアの実現法と応用の有効性を示すことができた。
確率的最適化のアイディアを「階層構造を持つ凸最適化」に導入するのに必要となる基盤数理構築のための調査研究を進める予定である。まずは、機械学習分野で検討が進められてきた単層型凸最適化のための数理の中から関連の可能性のあるアイディアを精査し、発展させていく方針から着手していきたい。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Inverse Problems
巻: Volume 36 ページ: pp. 36
https://doi.org/10.1088/1361-6420/ab551e
Splitting Algorithms, Modern Operator Theory and Applications, H. H. Bauschke, R. Burachik and D. R. Luke eds.
巻: Dec 2019 ページ: pp413-489
https://doi.org/10.1007/978-3-030-25939-6_16