本研究では,可視域外の波長を含むワイドバンド光の反射・吸収・発光特性のデータ解析により,最高レベルの識別精度を実現する知的センシング技術の開発を目的とする。物体の成分や特徴,組成を非破壊・非接触で知ることができる分光解析は,食品の産地判別,医薬品原料の種別,有害物質の推定,品質確認など,様々な応用が期待されている技術である。本年度は、深層学習結果に基づき識別問題に有効な特徴量抽出に特化した光学システムを導出する手法の汎用性および頑健性を高める拡張を行い、識別精度の向上を進めた。具体的には、可視域に加えて紫外・赤外の波長を含むワイドバンド光源に対する物体表面の分光反射率および吸光度を入力として、深層学習を通して対象物の素材識別に有効な観察波長の導出を行うプログラムを開発し、その汎用性と頑健性の向上に取り組んだ。また、学習データと識別ネットワークの間に仮想光学システムによる物理情報抽出のプロセスを組み込み,識別問題に有効な特徴抽出とデータを取得する光学システムの同時設計が可能なことを確認し、ノイズに対する頑健性を評価した。さらに、本課題で研究を進めてきた照射方向の異なる画像列に基づき対象物の分光反射特性を推定する技術の推定精度評価をおこなった。
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