研究課題/領域番号 |
19H04149
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Redirected Walking / 歩容 / 評価指標 / バーチャルリアリティ / 空間知覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,空間知覚をユーザに悟られない範囲で操作することで狭い実空間でも広大なバーチャルリアリティ(VR)空間での歩行移動体験を可能にする(A)Redirected Walking(RDW)技術について,歩容解析に基づく効果の客観評価指標を確立するとともに,(B)効果の個人差の要因を解明することである.これらを元に,ユーザに与えているRDWの効果をオンラインで解析しながらリアルタイムにパラメータを調整し,(C)ユーザごとに最適化されたRDWを実現可能なRDW制御器を実現する. 本年度は(A)として,RDWの効果のオンライン定量評価手法の確立に取り組んだ.具体的には,従来の質問紙を用いた閾値推定法に代わるものとして,生理指標や行動指標を用いて曲率操作の閾値を推定する手法を検討した.実験の結果,曲率操作の閾値と歩行指標および頭部動揺の分散に有意な相関が認められ,行動指標によってRDWの閾値を推定可能であることを明らかにした. また,(B)として,感覚処理特性とRDWの閾値の間に関連性があると仮説を立て,心理物理実験によって推定した個々人のRDWの閾値と青年・成人感覚プロファイル(AASP)を用いて測定した感覚処理特性の関係を評価した.実験結果から,感作傾向が高い参加者はRDWに気づきやすい傾向があることを明らかにした.また,感覚統合のモデルである最尤推定モデルの考え方に基づき,特定の感覚の信頼度を操作することで感覚統合のバランスを変化させ,個人の感覚統合のバランスの特性によらずRDWの効果を生じさせられる手法を検討した.昨年度検討を発展させた,曲率操作を適用する際に視聴覚不整合刺激と視覚ノイズを導入することで効果的なRDWを実現できる手法と,新規検討としてノイズ前庭電気刺激を用いて前庭感覚の信頼性を低下させRDWの効果を向上させる手法の2つを提案し,それぞれ有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り進展しているため.
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今後の研究の推進方策 |
行動指標という外部から計測可能な客観的な計測値によってRDWの閾値を推定できることを示せたことから,今後はオンラインでRDWの効果を推測し,個人ごとの効果の違いを考慮して動的にパラメータを変化させることで誰にでも効果的なRDWを実現する手法の構築を目指していく.
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