研究課題/領域番号 |
19H04153
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 真 京都大学, 工学研究科, 准教授 (40433198)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 可聴化 / 音場再現 |
研究実績の概要 |
本課題では、後期残響音を含めて高精度かつ効率的に音場を予測し、かつ、発音者自身が空間情報を含めた音場を体験しこれを評価することを可能とする音場可聴化プラットホームの構築を試みる。本年度に得られた成果は下記の通りである。 A-3:前年度に前倒しして実施を始めた「後期残響音のモデル化」では、後期残響音のモデル化の基本となる平面波による擬似完全等方音場の合成手法を構築した。今年度は前年度に前倒しして構築した擬似等方音場モデルをさらに発展させ、離散音場における完全等方音場モデル及び音場の等方性を評価するための指標を考案することで、任意の後期残響音モデル化のための理論基盤を構築した。本研究で構築した等方音場モデル及び等方性評価指標はともに音場を球面調和領域における展開係数に基づいて実現されており、容易に任意の音場の解析的な生成に繋げることが可能である。 B-1:前年度に構築した64ch再生システムの基本性能を検証した。その結果、再生システムによって発音者に対してその自発音の反射音を9.8 msの遅延で提示することが可能であり、床からの反射音以降に到来する反射音は適切に提示可能である。一方で、自発音収録のためのマイクロホンとスピーカにより形成される音響ループによるハウリングが生じたため、これを抑制するために信号ゲインを低く設定する必要が生じ、システムにより再現された反射音の音圧レベルが本来よりも小さいという問題が生じた。このため、ハウリングキャンセラを導入し、十分な音圧レベルで再生可能なシステムを構築する必要がある。次年度にはこの改良を加えることで、自発音可聴化システムを早急に完成させる予定である。 B-2:前年度には、直交グリッド状に配置された受音点群からHOA理論での仮想収音を可能とする手法を提案した。以上より本項目については実施が完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「A.後期残響音の到来方向分布の分析・モデル化」においては、モデル化の理論基盤となる離散音場における等方音場モデル及びその評価指標を構築しており、次年度に実行予定の可聴化システムへの統合に向けた準備は完了している。また、「B.発音者のための可聴化システムの構築」においても、スピーカアレイの作成及び自発音の可聴化システムの構築についてはハウリングキャンセラの導入以外については完了しており、また、非球状マイクロホンアレイによるHOA収録理論の構築については完了している。以上のように、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果をさらに発展させて後期残響音のモデル化及び自発音可聴化システムへの統合を進め、システム全体の性能について物理的・心理的両面からの評価を実施し、その構築を目指す。
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