本課題では、後期残響音を含めて高精度かつ効率的に音場を予測し、かつ、発音者自身が空間情報を含めた音場を体験しこれを評価することを可能とする音場可聴化プラットホームの構築を試みる。本年度に得られた成果は下記の通りである。 B-1:前年度に明らかとなった課題である自発音収録のためのマイクロホンとスピーカにより形成される音響ループによるハウリングを解決するために、ハウリング抑制のためのハウリングキャンセラの導入を行った。その結果、ハウリングを一定量抑制することが可能となった。一方で、システムで再現する所望音場の性質(残響時間など)によってはハウリングを完全に排除することが困難であり、これを抑制するためには実際の音場よりも反射音の音圧レベルを小さく出力しなければならないケースがあることがわかった。 C: Aで構築した後期残響音モデルとBで構築した可聴化システムの統合を行い、聴取者自らが発した音声や楽器音などに室内で生じる音響的フィードバック、すなわち、聴取者が発した音に対する室の初期反射音及び後期残響音を仮想的に聴取可能とする可聴化システムを構築した。構築した可聴化システムでは、聴取者が発した音の音響的フィードバックを9.8 msの遅延で聴取者に提示することが可能であり、例えば床などから到来する極初期の反射音以降に到来する反射音及び残響音を適切に提示可能であることを明らかにした。一方で、上記B-1でのハウリング抑制における課題が完全には解決されなかったため、特に残響音のエネルギーの大きい空間を対象とする場合、すなわち残響時間が長い空間を対象として可聴化を行う場合にはハウリング発生を回避するために反射音の音圧レベルを実際よりも小さくする必要があることが分かった。
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