本研究は、(1)「イヤーカフ型ウェアラブルデバイス」により負担・行動制約なく測定される脈波信号から、(2) 「血圧を一定に調節する心臓・血管圧反射機能を測定する技術」を使ったデバイスを製作し、在宅で日常生活を送りながら健康状態を外部評価できるシステムに仕上げることを目指したものである 本研究は、イヤーカフ型ウェアラブルデバイスの(1)ハードウェア開発に関して、「透過式・非圧迫での光センサー外耳装着方法」の特許を取得した(加藤有一、2023-04-20 JP7261491B2)。これを発展させ、誰が着けても同じように規準化脈波容積が測定できる汎用端末を試作することを目的とした。この完成は、仰臥位の脈波検出精度から評価する。外耳形状の異なる計30名を対象に、心電図RR間隔から得られる心拍数と誤差5%以内を目標とし、奇形耳を含め23名の実験から達成した。 また、(2)ソフトウェアの基礎部分に関しては、イヤーカフに内蔵させた加速度センサーからの信号を積分処理し、圧反射機能の測定時間と同期させる測定・解析アプリを製作し、自律神経機能検査や日常生活下測定を可能とするソフトウェアの完成を目指した。結果、自律神経機能として血管交感神経活動を非侵襲的に測定可能な技術は確立し、特許を取得した(加藤有一、2022-06-07 JP7081831B2)。しかしながら、日常生活上での測定には、動きによる脈波の補正プログラムが必要となる。様々に試作したが、脈波信号のみからの補正プログラムが失敗に終わった。これは、脈波の立ち上がり点の決定が困難なことが原因である。心電図情報から脈波の立ち上がり点を推測することで補正プログラムが可能なことを確認したが、これも心電図が乱れるとうまくいかず、また、心電図情報が必要なため汎用的はウェアラブルデバイスとはならないことから、今後のさらなる研究が必要となる。
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