研究課題/領域番号 |
19H04157
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
竹川 佳成 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (60467678)
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研究分担者 |
平田 圭二 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (30396121)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 技能 / 学習支援 / AI / ヒューマンコンピュータインタラクション |
研究実績の概要 |
本研究の目的はHCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)技術および機械学習を統合した技能習得予測モデルの構築および学習支援AI基盤の構築である.当該年度は(1)技能習得データセット構築および(2)技能習得予測モデルの構築に注力した.イラスト描画・ピアノ・習字・プログラミング・コミュニケーションといった幅広い分野を対象に取り組んだ.紙面の都合上,イラスト描画およびピアノに関して報告する. イラスト描画においては,幾何図形から構成されるイラストの模写のスキル予測に取り組んだ.イラストの練習方法には代表的なものとして模写がある.模写とは,手本をまねて描画する練習方法である.手本を見ずに一から描画するより描画難度が低いため,基礎練習としてよく用いられる.3種類の幾何図形から構成される課題イラストを模写するという練習を1日20分間,5日間連続した場合における模写の精度を追跡調査した.データを効率的に取得するために実験システムを開発した.8名の被験者に参加してもらい,いずれの被験者も,学校教育で絵を描画した経験はあるものの,絵画教室など絵の専門的な教育は受けていない.イラスト描画上達者3名に上達の変容を分析してもらったところ,緩やかな上達,急激な上達後に緩やかな衰退,上達がみられないという3種類の上達の変容が観測された.また,手本イラストと描画されたイラストとの一致度などの技能習得予測モデル構築に資する特徴量を発見した. イラスト同様に,ピアノ初心者6名に対して,初歩的なピアノ楽曲を課題曲とし,1日25分間,5日間連続して練習してもらった.実験システムを構築しデータを集積した.音高正解率,打鍵時間間隔(Inter set On Interval,和音のバラツキなどの習得予測モデル構築に資する特徴量を発見できた. これらの研究成果は,学術論文誌3件に採録され,国際会議3件にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は(1)技能習得データセット構築および(2)技能習得予測モデルの構築に注力した.イラスト描画・ピアノ・習字・プログラミング・コミュニケーションといった幅広い分野を対象にデータセットを効率的に集積するための実験システムの開発を進めることができた.また,実験システムの一部を使って5日間にわたる実験を実施し,モデル構築に資する特徴量を発見できた.ヒューリスティック分析ではあるものの,「学習者個別に学習方法は異なるもののグルーピングできること,初心者のタスク習得時期は学習方法によって異なるものの一定の傾向がある」という本研究の仮説を支持する結果が得られた.以上の結果より,本研究課題の進捗状況は概ね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
2020年2月および3月に実施する予定であった中長期的な被験者実験が,コロナウィルス感染のために実施できなかった.開発してきた実験システムは,実験者がある程度操作しなければ実験を始められないものばかりであった.2021年度では,スタンドアロンで動く実験システムに改良することで,実験者がその場にいなくても,被験者実験ができるようにする.以上の被験者実験データをもとに,構築したデータセットに対して機械学習・伝統的統計モデリングを利用してスキルの数理モデルを構築する. また,技能習得予測モデルを活用した学習支援AI基盤の構築に着手する.例えば,現状のスキル・最終目標・設定した練習プランで練習し続けた場合における,今後の習得度予想を効果的に提示する技術を確立する.この際,技能習得予測モデルの精度をあげるために点検課題を学習者に実施してもらう点検機能,常時練習を記録するモニタリング機能,点検課題の結果および練習履歴を技能習得予測モデルに適用することで技能習得推定結果を導出する機能などを構築する.各機能の有用性を検証するために評価実験を実施する.予測値と実測値の誤差,練習量,練習時の視線といった生理データ,質問紙調査といった定量的なデータ,インタビューによる言語報告といった定性的なデータをもとに各技術の有用性を検証する.
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