本研究の目的は,ルームスケールを超えたVR体験を安全で低コストかつ高没入に実現可能なロコモーションプラットフォームとして,歩行プラットフォームおよびモーションプラットフォームに関する基盤技術を構築する方法を確立することである.歩行プラットフォームについては,1) 大腿部が拘束された状態で全身の歩行動作を推定し,2) VR空間内の自分自身の分身となるアバターを操作可能にし,3) 推定した歩行動作から歩行距離や速度を高精度に推定可能にする.モーションプラットフォームについては,1) いかなる揺動状態においても伸縮速度170mm/sec以上の揺動速度を実現し,2) ロール方向とピッチ方向のみの揺動でどこまで慣性力や路面振動,風などの外力による効果を高臨場に呈示できるのかを明らかにし,3) ユーザの荷重のかけ方に応じてインタラクティブに揺動可能にする. 2021年度において,歩行装置に関しては,歩行動作を前進及び旋回もしくは横移動に限定した状態において,センサの固有特性を考慮したキャリブレーション機能を実装し,高精度に左右の足の歩行動作から歩速や歩数を推定可能となった。また,水平方向に135度間隔でセンサを配置した際に,67.5度方向にまっすぐ進行可能であることがわかった。さらには,傾斜した地面を歩行する際に歩行速度に変化をつけることで,上り坂を上っている感覚や,下り坂を下る感覚を知覚できることがわかった。 モーションプラットフォームに関しては,ロール方向にヒンジ機構を設けて構造を最適化することにより,アクチュエータの最大加速度(±1G)で±26°の揺動を実現することができた。また,加速度を動的に変更可能にすることで,路面振動のような高周波振動を呈示することが可能となった。
|