研究課題/領域番号 |
19H04167
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
徳永 健伸 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20197875)
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研究分担者 |
横野 光 明星大学, 情報学部, 准教授 (60535863)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 対話コーパス / アノテーション / 対話システム / ゲーミフィケーション / クラウドソーシング |
研究実績の概要 |
ゲーミフィケーションのためのプラットフォームとしてMajangAB社が開発したMinecraftを使用した.Minecraftでは立方体のブロックで構成された三次元の仮想世界でプレイヤーがアバターを通して,ブロックを自由に設置・破棄して世界を変更できる.Minecraft自体に特定の目標があるわけではなく,プレイヤー自身がMCの世界の中で自分の目的を設定できる.今年度はデータ収集基盤の構築に注力した.具体的にはMinecraftのmod(Modification)とよばれるシステム拡張の枠組を利用してシステムを拡張し,以下の機能を持つ,対話データ収集基盤DDCraftを実装した. (1) ゲームプレイヤーの発話と各発話時点での世界の状況を一緒に記録する機能,(2) 外部に用意した対話システムがゲームに参加できるようにするためのインターフェース機能,(3) ゲーム参加者同士が自律的にペアを作り,個別の世界に移動して協働して課題を解決できる機能,(4) プレイヤーが自分あるいは相手の発話にアノテーションをする機能 データ収集基盤を評価するためのゲームとして,1990年代にEdinbourgh大学で構築されたマップタスク・コーパスを作成するための地図課題を参考にしたMansion Taskを実装し,クラウドソーシングを利用したデータ収集実験をおこなった.その結果,ゲーミフィケーションによって質の高い対話データが収集可能であるという結果を得ると同時に解決すべき課題を荒い出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおり対話収集データ基盤DDCraftを構築した.DDCraft上で動作させるゲームとして,1990年代にEdinbourgh大学で構築されたマップタスク・コーパスを作成するための地図課題を参考にしてMansion Taskを実現した.Mansion Task は協力的なタスク指向型対話を収集することを目的とした二人用のタスクで,プレイヤーはそれぞれ内容が一部異なる地図を渡される.地図には部屋の配置とゴール地点,更にゴールに到達するために行うべき複数のサブタスクの情報が記されている.作業者らの目的はこれらのサブタスクを達成し,ゴールに辿り着くことである.サブタスクを達成するための情報は二枚の地図に分割されて記載されるため,作業者らは対話によって情報を交換することになる.また,各サブタスクは二人が協力しないと達成できないよう設定されている.今回は特に状況付けられた対話の特徴の一つである参照表現の誘発を目的としたサブタスクを設定した.先行研究を参考にし,同一の物体を複数配置することで,特定の物体を表現しようとした参加者に参照表現を使用させることを狙った. クラウドソーシングによってMansion Taskを用いて状況付けられたタスク指向型対話の収集実験をおこなった.その結果として,ゲーミフィケーションにより作業者が動機づけられることや,DDCraftを用いることで状況付けられた対話を周辺情報と共に収集できることが確認できた.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおりデータ収集基盤DDCraftをした.次年度以降,今年度に実施したデータ収集基盤を用いた収集実験をふまえDDCraftをさらに洗練する.現在のバージョンではゲームに参加するために事前にクライアント側にモジュールをインストールする必要があり,これがゲームの参加者への障壁となっている.情報記録の機能をできるだけサーバー側で実装することを念頭に,記録する情報とクライアント側でのモジュールのインストールの必要性とのバランスを考慮しながら記録情報の再整理とそれをふまえた基盤の設計変更をおこなう..また,PCのみならず,より一普及しているゲーム・クライアント端末に展開できないかを検討する.データ収集基盤を評価するためのゲームとして,教育応用の対話システム,Minecraftに関するQAシステムを実現し,そのためのデータ収集のためのゲームを設計する.このゲームを用いて,事前に参加者を募った形で実施するクローズドテストをおこなう.さらに研究成果として対話データ収集基盤DDCraftの公開方法について検討する.
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