研究実績の概要 |
2020年度の主な成果は以下の通りである. (A) 2019年度に当研究の一環として知識グラフ (knowledge graph; 事物間の関係をグラフとして表現した知識ベースの一種) の二値量子化埋め込み法を提案し, 量子化し高速計算が可能であるにも関わらず, 精度が維持できることを示した. 2020 年度は, これに関して更に研究を発展させ, 以下の新しい知見を得た. (i) 量子化しても, 次元数を十分確保すれば表現できる知識グラフのクラスは維持されること (知識グラフ埋め込み法の完全性) を証明した. より多くの知識グラフデータに適用し, 提案法の効果をさらに実証した. (ii) 勾配法によらずランダム探索による最適化を試み, 既存法と遜色のない精度を得た. ビットフリップの繰り返しによる単なるランダム探索なので, 実装が容易であるという利点がある. (i) の成果は, 2019年度の成果とともに, 学術論文にまとめ学会誌へ投稿した (査読中). (ii) の成果は, Findings of Association for Computational Linguistics: EMNLP にて公表した. (B) ベクトル空間上の近似最大内積検索 (maximum inner product search; MIPS) の速度向上について予備実験を行った. 既存法より高速かつ高精度な検索結果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
埋め込み法の知識グラフ補完への応用は, 量子化に関する理解が深まり, 進展を見た. 最大内積検索タスクについては, 予備実験は順調に進んだが, 有効な応用タスクの選定に手間取ったためやや遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
知識グラフの量子化埋め込みについては, 学習過程の理解が深まったことから, ベクトル空間上の幾何的な位置関係を考慮し, 性能改善が可能か検証する. 最大内積検索については, 応用タスクを選定し効果を実証する. ニューラルネットワークを用いた転移学習への応用について検討する.
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