研究実績の概要 |
高炉を用いた鉄鋼生産の「操業時の異常検知問題」に対して、教師なし学習によるアプローチ(板倉(IBIS2022))と教師ある学習によるアプローチ(木崎(IBIS2021))を試みた。前者は人手により教師ラベル作成の労力を減らすことを可能とする一方で、後者は高い検知精度を達成することが出来るため、操業時に選択的に利用できる。更に、CNNを用いた教師あり学習においては5分から15分前のデータの利用が精度の向上につながることを確認した。早期異常検知システムの構築につながる重要な成果である。
また、「マルチタスク学習による高温状態の粘度予測」のための方法を開発して国際誌にて発表した(Saigo et al., Scientific Reports, 2022)。これは流体力学におけるEinstein-Roscoeの式に基づいており、実験で測定可能なパラメータの外側についてもロバストな予測(外挿)を行える特徴を有している。計算機実験の結果、外挿を考慮しない従来の機械学習手法(ニューラルネットワーク、SVM、LASSO、勾配Boosting木など)よりも優れた予測精度を達成した。さらに、室温実験のデータを利用して非線形カーネルのハイパーパラメータの最適化を行い、高温実験の予測精度の向上(転移学習)に貢献することを示した。また、ガウス過程回帰を利用することで計算できる予測の分散は、予測の信頼度として利用できるため有用である。
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