研究課題/領域番号 |
19H04177
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
酒井 智弥 長崎大学, 情報データ科学部, 准教授 (30345003)
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研究分担者 |
宮本 潤哉 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (20789565) [辞退]
高田 寛之 長崎大学, 工学研究科, 助教 (10297616)
尾長谷 靖 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (40399762)
松永 昭一 長崎大学, 工学研究科, 教授 (90380815)
東嶋 美佐子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (40279005)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 転移学習 / データ同化 / スパースモデリング / 深層展開 / 知識獲得 |
研究実績の概要 |
本研究では、数理モデル化された専門分野の知識や経験則に基づくディープニューラルネット(DNN)の設計と学習によって、合理性の高い人工知能の実現を目指している。この取り組みによって、数理モデルでデータを説明するデータ同化の高性能化や、数理モデルを補う知識をデータから獲得する方法論の形成を技術的な成果として見込んでいる。とりわけ医用データや生体信号の解析では、精密な数理モデル化と大規模データの収集の両方に困難を抱えがちであり、解析結果にも合理性が特に要求されるため、本研究の高い応用効果を期待している。これを踏まえ、初年度ではデータ同化の算法を深層学習技術で学習可能にする観点から先行研究を見直すことを基礎研究とした。また、本研究の実証となる具体的な医工学応用の設定および医学・保健学的知識を記述した数理モデルの妥当性を実験的に検証した。 基礎研究では、スパース解法の深層展開について、学習における逆伝播の計算量の低減、学習の収束性、学習による知識獲得の可能性、L1正則化以外の目的関数への適用を検討した。スパース正則化の重みはスパース解法の超パラメタであるが、深層展開を通して学習可能になる。この超パラメタの学習を知識獲得に積極的に用いるためにスパースモデルと損失関数を見直し、超パラメタを自動調整する手法を具体化した。 医工学応用では、肺音の特徴抽出、時系列深度画像による嚥下の特徴抽出、X線造影像の血管強調画像処理の高性能化に着手した。断続性ラ音と呼ばれる異常な肺音を呼吸音から分離して特徴抽出する課題では、ウェーブレット基底を用いた肺聴診音のスパースモデルが肺疾患の病態と相関する断続性ラ音の特徴抽出に有効であることを確認できた。時系列深度画像による嚥下の特徴抽出については、後期高齢者を被験者として、不顕性誤嚥リスクに関する情報を非侵襲的に獲得できる可能性を検証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた基礎研究と医工学応用については、研究実績の概要で述べたとおり一定の成果が得られている。また、論文誌や研究会等で成果発表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
基礎研究では、深層学習における逆伝播の計算量の低減、学習の収束性、学習による知識獲得の可能性、L1正則化以外の目的関数への適用等を検討する。医工学応用では、本年度で有効性を確認できた肺聴診音のスパースモデルに基づき、より病態と相関する肺音特徴の発見と抽出のための深層学習を試みる。時系列深度画像による嚥下の特徴抽出では、得られた保健学的知識に基づき嚥下による前頸部の変形の特徴を積極的に抽出するDNNを設計する方針である。また、口腔がん・唾液腺がんの画像診断への応用も試みる。
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