シミュレータベース最適化は,解の望ましさを表す目的関数と解の表現型の間の関係がブラックボックスであるという難しさを持ちます.このようなシミュレーションベース最適化は,工学や産業において頻出の問題クラスです.進化計算をはじめとする最適化手法は現実世界の問題に広く適用可能である一方,シミュレータの設計時には最適化の結果に直結するような意思決定項目が多数あり,問題設計者はこれらを人力で決定していく必要があります.これはシミュレーションベース最適化の導入の妨げとなります.本研究は,これらの意思決定項目を最適化フレームワークの中で最適化対象として扱うことで問題設計者の負担を削減し,シームレスな最適化適用を実現する方法論の確率を目指しています. 当該年度は,現実環境の不確実性に起因して,解の運用時の環境をシミュレータ上で一意に表現できない場合がある問題に着目し,以下のような研究成果を得ています. 1.2022年度に提案した考えうる最悪ケースでの性能を最大化するアプローチを改良し,現実的な問題の一例として船舶の制御則の最適化を取り上げ,従来アプローチと比較して安定的に最悪性能を最適化することができることを実験的に示しました.この成果は,国際学術論文誌ACM TELOにて公表されています. 2.最悪性能と性能保証範囲の間にはトレードオフがあるため,どの程度の範囲で性能保証すべきかは難しい意思決定問題となります.これに対して,最悪性能と性能保証範囲の間のトレードオフとなるパレート最適解を逐次的に導出する多目的最適化法を設計しました.その成果は国際会議GECCOにて公表されています.
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