今年度は最終年度であるため,3Dクラスタリングと深層転移学習を組み合わせた活動パターン識別手法を最適化し,理論的な確認を行った.本研究では, 時空間3Dクラスタリングにより得られた神経電気活動の多点時空間パターンを画像化した.転移学習に用いる学習済みモデルとしてVGG16を用いた.活動パターンを発現時刻順に結合して入力として224×224 画像を生成した.複数の 8×8 画像を結合して空間的連続性が局所情報として配置される空間情報優先神経活動パターンイメージ(SIP-NAP)と時間的連続性が局所情報として配置される時間情報優先神経活動パターンイメージ(TIP-NAP)の 2 種類の画像データに対し,バリデーションデータの識別精度はTIPで99.97 ± 0.02%,空SIPで92.18 ± 2.23%と高い精度を示した.特に,TIPを識別対象とした場合,転移学習モデルのプーリング層の出力には,識別に資する空間的,時間的特徴量が抽出されたことが示唆された. さらに,シナプス伝達が生じない短い時間幅において再現よく誘発される瞬時空間パターンを,同時刻に活性化された神経活性化経路(ストリーム)のfootprintとして抽出し,これを結合した画像に対して転移学習にて識別を行った.この結果,概ね9割超の高い精度で識別可能で,ストリームが情報をコードしている可能性が示唆された.同じ刺激でも複数の異なった経路が活性化されることがあり,誘発活動は入力に対して厳密に固有ではなかった.また,誘発応答と自発活動におけるストリームは共通のものが存在することが示された.これらの結果は<自発性活動と誘発応答活動はそれぞれ独立した活動ではなく,自発性活動は神経活動の内部状態を形成し,誘発応答活動パターンの ソースになっている>という「神経回路網入出力のルースカップリング」仮説を支持するものである.
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