研究実績の概要 |
本研究は,多肢型飛行ロボットという発展的身体構成を実現することで,環境適応可能な複合的移動様式と操作能力の相乗的獲得するという目的を中心に進めてきた.最終年度の2022年度では,(1) 多リンク系モデルの飛行制御手法の汎化 (2) 多肢型飛行ロボットの空陸両用の移動能力の獲得,(3)環境固着を活用した空中操作行動手法の体系化,を実現した. まず,今年度は多リンク系モデルの飛行制御手法に着目し,最小構成である2リンクモデルから四足モデルである8リンクまで対応できる一般化飛行制御手法を提案した.それぞれの形態下での実機検証を踏まえて,提案手法の有効性を示した.これにより,多肢型を含む多リンク系の飛行理論の基盤構築が実現できたと考える. 次に, 多肢型モデルの空陸両用の移動能力に関しては,初年度に実装した四足モデルを対象に,歩行時のロータ推力、関節トルク、重力、及び末端接触力を包括した力学モデルをまず明らかにした.そのうえで,准静的運動の仮定のもとで,ロータ推力と関節トルクの両方を利用した静的歩行の制御手法を提案し,地上移動の実機実証を行った.さらに,歩行から飛行への連続的な移動様式の遷移も実現しており,環境に適応した複合的な移動能力を獲得したと言える. 最後に,環境接触を深化させ,その場固着を利用した空中操作行動の体系化に取り組んだ.特に,環境への固着を吸着と押し当ての二通りの方法に分けて,安定な接触を保証するそれぞれの制約条件を定式化し,それを飛行制御器に組み込む.一方,他の自由な手先の操作運動に関しては押し付け、スライド、および回転の三つの方式に分け,それぞれの方式で発生する操作反力を考慮した動作計画法を構築した.実機検証においては,多肢型モデルの部分解であるシリアルリンク構造の機体を用いて,天井に固着した状態でのドリル開け、刷毛塗装、およびバルブ開閉動作を実現した.
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