研究課題/領域番号 |
19H04191
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
梅田 和昇 中央大学, 理工学部, 教授 (10266273)
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研究分担者 |
池 勇勲 中央大学, 理工学部, 助教 (90823766)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 距離画像計測 / センサフュージョン / 複数モダリティー / 小型距離画像センサ / アクティブステレオ |
研究実績の概要 |
本研究では,複数のモダリティーの融合により距離画像計測手法の高度化を行うことを目的とし,具体的な融合として,(a) アクティブステレオにおけるDepth from Defocus (DFD)との融合,(b) ステレオとStructure from Motion (SfM)の融合,(c) Time of Flight (TOF)とステレオの融合に関する研究開発を行っている.2019年度は,(a)(b)に関して以下の成果を上げた. (a)に関しては,まず我々の既存のDFD手法の改良を行った.本手法は,複数のレーザスリット光を対象に投影してカメラで撮像した時の各スリット光像のぼけの大きさを求め,得られた各点でのぼけの大きさから距離画像を求めるというものである.手法の改良により,オンラインでの計測を実現した.また,複数のスリット光を用いたアクティブステレオに基づく距離画像センサに対し,ぼけ情報を求めてその結果を組み合わせることで,これまで複数スリット間での誤対応(投影したスリット光と撮像されたスリット光像との対応を間違えること)を避けるために狭くせざるを得なかった計測レンジを,大幅に拡大することに成功した. (b)に関しては,ステレオカメラとSfMの持つ相補的な特徴を利用し,2台のカメラによる2眼ステレオとSfMとを融合させることで,距離画像の計測精度を向上することに成功した.融合のための具体的な手法として,擬似バイラテラルフィルタと呼ぶ手法を提案し,定式化した.なお,本手法の名称は,既存の画像処理技術であるバイラテラルフィルタとの類似性から定めている.具体的な手法の実装には,車載を目指して我々が開発した魚眼ステレオカメラを用いた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は,3つの融合のうち,(c)に関しては諸般の事情により成果が上がらなかった一方で,(a) (b)に関しては期待以上の成果が上がったことから,総合的にはおおむね順調に進展していると判断する.(a)に関しては,既存のDFD手法の改良に関しては,概ね想定通りの成果が得られた.複数のスリット光を対象に投影してカメラで撮像した時の各スリット光像のぼけの大きさから距離画像を求めるという計測手法の大枠に関しては既存の成果を引き継ぎつつ,これまでオフラインかつ低速での計測しかできなかったものをオンライン化できたことは顕著な成果であると考えている.一方,複数のスリット光を用いたアクティブステレオに基づく距離画像センサに対し,ぼけ情報を求めて組み合わせることで計測レンジの拡大に成功したことは,本研究全体の流れに沿いつつも,当初の具体的な計画にはなかった新たな成果である.複数のスリットと複数のスリット像との対応の候補を,求めたぼけ情報により得られる距離値(視差値)と比較し,最も確からしい対応を求めるという手法により,従来手法では380~800 mmであった計測範囲を 200~2000 mmと大幅に拡大することができたのは,顕著な成果であると考えている.また,(b)に関しては,擬似バイラテラルフィルタと呼ぶ手法を提案・定式化し,魚眼ステレオカメラで実装して,手法の有効性を示した.擬似バイラテラルフィルタは,各点において,2眼ステレオで得られた距離値を基準とし,近傍でSfMによって得られた距離値の重みつき平均を,各点からの距離と距離値(視差値)の差から求めた重みを用いて求めるというものである.これにより,はずれ値の影響を受けづらく高精度であると同時に高密度の距離画像計測を実現した.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度に成果を上げた(a)(b)の研究の継続・発展を行いつつ,(c)の研究の推進をはかる. (a)に関しては,DFD方式に基づく距離画像計測手法に関して,オンライン化・高速化で成果が上がった一方で,計測精度に関しては十分な向上を実現できていない.そこで,センサの構成ならびにぼけのモデルを見直すことで計測精度の向上をはかること,ならびに,アクティブステレオによる距離画像計測との具体的な融合手法を構築することを目標とする.また,2019年度のもう一つの成果である複数のスリット光を用いたアクティブステレオに基づく距離画像センサへのぼけ情報付加による計測レンジ拡大であるが,この手法は対象物の反射率の違いに影響されるという欠点がある.そこで,この欠点を克服し,センサの完成度を高めることを目指す. (b)に関しては,まずは2019年度の重要な成果である擬似バイラテラルフィルタに関して,定式化の改良を行う.現状でバイラテラルフィルタからの類推から重み形状をガウス分布としているが,数理的により最適な重みを求めることを検討する.また, SfMとして現状で連続する2フレームの画像を用いているのを3フレーム以上に増やすことなどで高精度化することも検討する. (c)に関しては,2019年度に進められなかったTOFとステレオの2種のセンサで得られる距離画像の融合による計測可能対象の拡大と高精度化に取り組む.この時,TOFとステレオの多様な組み合わせを検討する.その一つとして,2019年度に購入したTOF方式のFAROのように大スケールで得られる距離画像情報と,我々が開発しているセンサなどで得られる小スケールで得られる距離画像との組み合わせによる距離画像計測の高度化,ならびにその基盤技術としてレジストレーション手法の構築も新たな目標としたい.
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