研究課題/領域番号 |
19H04192
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
小澤 隆太 明治大学, 理工学部, 専任教授 (40368006)
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研究分担者 |
岡田 志麻 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40551560)
福永 修一 東京都立産業技術高等専門学校, ものづくり工学科, 准教授 (70402518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 筋電モーメント / ロボットハンド / 筋電センサ / 把持動作識別 |
研究実績の概要 |
本年度は筋電モーメントを用いた運動解析、筋電センサおよび義手ハンドの開発、および把持動作識別に関する研究を行った。人間の前腕の周囲に取り付けた筋電センサから算出した0次から2次までの筋電モーメントが、把持動作中に示す変化を観測した。これらの筋電モーメントの観測情報から、人の把持形状の違いや把持中に対象物を握る内力の変化を見ることができることが分かってきた。次に、物体の把持動作を行うための到達運動では、把持対象物の種類や形状により、対象物に近づく掌の向きが変わってくる。そこで、筋電センサと慣性計測センサの情報を統合し、運動の動的な状態を観測することで把持とこれらの状態の識別を行う方法を提案した。これにより、掌の姿勢と把持状態を同時に推定することができることが分かった。また、この方法を慣性計測センサのみで推測する方法と比較することで、これらの組み合わせが識別率向上に有効であることを示した。次に、生体計測に利用可能な導電性エラストマを利用して,前腕において多数の表面電極の配置を簡に行えるウエアラブルな電極アレイの開発を行い,これを用いた手首姿勢の判別への応用を検討した.バンド型デバイスとスリーブ型デバイスを製作し,それぞれのデバイスで筋電図を計測,特徴抽出し,サポートベクターマシーンを適用して手首関節に関する 4 方向の動作姿勢の判別実験によりその有効性を示すことができた.また、子供用の義手の試作機の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
筋電モーメントによる解析では、健常者を対象に平面での筋電モーメントを観測することにより、把持動作中の内力変化との関係を調べた。内力が低い場合に比べて、内力の上昇に伴う1次の筋電モーメントの状態のばらつきは小さくなるものの、その遷移する空間には共通な領域が多く、内力の上昇をこのデータから判断することが難しいことが示唆された。一方、2次モーメントを調べた場合、内力の上昇に伴う状態のばらつきが1次モーメントに比べて小さく、把持形状を作っただけで、指にかかる内力が低い状態と把持力を上げて内力が高くなった状態が分離できる可能性が示唆された。 次に、把持動作が腕の到達運動と関係していることを利用し,腕に取りつけた筋電センサと慣性計測センサから得られる情報を合わせることで把持方法と到達する際の手の向きの同時推定を行う識別機の開発を行った.識別器にはk近傍法を用い,データ間の距離を測る尺度としてDTW(Dynamic Time Warping)距離を用いて、握力把持と精密把持,側面把持の3つとした.到達方向は上,横,下の3方向とした.したがって合計9種類の動作を識別した.提案手法はIMUセンサのみを用いた方法よりも識別率が高かったため,センサ情報を統合して取り扱うことのできる提案手法の有効性が示された. 筋電位の多点計測装置を行うために導電性エラストマを用いて同時に3か所の筋電図計測が可能なウエアラブル電極アレイの開発を実施した.サポート材等の基礎検討、周波数解析による動作判別のために必要な筋電図情報の計測手法の基盤は確立できている.また,動作判別に必要な信号の特徴化もできており、5名の被験者平均で均 96.2% の正答率を示すことができた。 本年度はコロナ禍により、十分な被験者を確保するのが難しかったこと、および、開発施設を使えなかった時期があり、研究計画にやや遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
筋電位は被験者の違いや疲労等による経時的な信号変化が大きいことが知られている。そこでこのような変化に対して、平面筋電モーメントの信号の安定性の検証とそこから得らえる把持作のロバスト性および推定精度についての検証を行っていく。把持推定に関して、複数の推定モデルを検証し、筋電モーメントの推定に適した推定モデルを見つけ、把持動作の予測精度の向上を図っていく。このようにして得られた推定結果を義手に適用し、筋電モーメントによる義手の運動制御方法を開発する。 また、空間での筋電モーメント手法の解析を行う。また、その解析手法を検証するために、空間的に計測可能な筋電位計測システムが必要となる。そこで、現在開発中の筋電センサシステムの極数を増やし,マトリクス上に電極を配置できるような回路設計を行う。この開発した計測システムを用いて、平面での筋電モーメントと空間での筋電モーメントの特性の違いについての検証を行っていく。
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