研究課題/領域番号 |
19H04197
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
永井 岳大 東京工業大学, 工学院, 准教授 (40549036)
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研究分担者 |
須長 正治 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (60294998)
山内 泰樹 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (60550994)
増田 修 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (90775967)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 色覚多様性 / 2色覚 / 色弁別 / 色差知覚 |
研究実績の概要 |
カラーユニバーサルデザイン(CUD)とは、様々な色覚型の人に適切に情報を伝達できる色彩デザインのことを指す。本研究は、次世代CUD技術の基幹となる色知覚特性の解明を目指し、光受容器における光受容特性の違いだけでなく、より高次な色認識の仕組みに起因する色覚型間の様々な色知覚特性の違いを明らかにすることを目的としている。 2021年度は、新型コロナウイルスの感染状況に留意しながら、1型・2型2色覚の被験者を対象に、色弁別、大きな(閾上の)色差知覚、目立つ色の探索という異なる心理物理課題について、それぞれ感度計測を行った。その結果、色弁別と色差知覚については、色覚正常と1型・2型2色覚の間で輝度・S軸に対する相対的感度が同程度であった。これは、1型・2型2色覚と3色覚では、赤・緑成分を含まない色刺激に対しては、微小色差や大きな色差の感度特性において大きな違いがない可能性を示している。この傾向は、本研究計画実施前に行った予備実験から得られた色差知覚特性が色覚型間で異なるという結果とは異なっていた。 一方で、目立つ色を探索する課題における応答時間を計測したところ、2型2色覚被験者では他の色覚型の被験者よりもS軸に対する相対的な感度が高く応答時間が有意に早かった。この結果は、たとえ色差に対する感度が色覚型間で同等であったとしても、色探索課題においては色の使い方に関する戦略が色覚型により異なる可能性を示唆している。ただし、個人差が大きかったため結果の解釈には注意が必要である。 総じて、これらの実験結果は当初の予想に反しており、当初想定していた以上に、CUDにおいて高次な色覚特性に着目することの重要性を示唆すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には、色覚正常な被験者と1型・2型二色覚の被験者を対象に、色弁別、色差知覚、色の目立ちを調べることを計画しており、計画した実験はおおよそ実施できた。ただし、当初の予定とは異なり、大きな色差の知覚においては色覚型の間で大きな違いが見られなかった。その一方で、色の目立ち判断課題においては2型二色覚被験者において三色覚よりもS錐体信号に強く依存する特異な傾向が見られた。研究計画当初に想定していたよりも、高次な色覚特性に着目する必要性が強く示唆される結果が得られたと言える。この結果は、今後の研究計画を調整する必要性につながるものである。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の結果から、当初想定していたよりも高次な色認識レベルにおいて色覚型間の違いが存在する可能性が示唆された。そこで、研究課題立案時と比較して、より高次かつ複雑な色認識課題の特性を明らかにする方向へシフトすることにした。具体的には、1) 色弁別感度と閾上色差知覚感度のメカニズムの違いの有無を明確にし、その情報処理段階に至るまでは色覚型間で色情報処理過程に違いがないことを明確に示すこと、2) 多色刺激に対する感性(例えば好み)惹起特性の違いを明らかにする、ことを新たな目的に設定した。これにより、高次色覚特性において色覚型間の違いが存在する可能性を検証する。
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