研究課題/領域番号 |
19H04201
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 勇輝 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50636066)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNAナノテクノロジー / 核酸ナノ構造体 / DNAオリガミ / 細胞膜 / 原子間力顕微鏡 / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
2019年度は,本研究課題の中心となる研究項目(核酸ナノ構造体の内在化経路の解明)に重点的に取り組んだ. 細胞外の様々な物質を取り込む過程であるエンドサイトーシスは,クラスリン依存的経路,カベオラの他に,それらに依存しない経路もあり,それぞれに関与するタンパク質の同定および機能解析が進んでいる.しかし,核酸ナノ構造体がどの経路で内在化するのかについては,構造体の形状やサイズよって諸説あり,統一的見解が得られていない.本項目では,サイズ,形状を系統的に設計した核酸ナノ構造体をDNAオリガミ技術により作製し,それらの要因が内在化の経路とどのように関係するのかを明らかにするとともに,その過程で起こる細胞表層の形態・構造変化の機能的意義の解明を目指している.これまでに,高速原子間力顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡との相関イメージングにより,クラスリンエンドサイトーシスにおける生細胞膜の形態変化とクラスリンの局在・集積を同時観察することに成功している.本年度は,構築した一連の DNAオリガミナノ構造体の形状確認および蛍光修飾を完了したほか,その一部について,EGFP融合型クラスリンを発現させた培養細胞上での相関イメージングを開始した.ナノ構造体の内在化の瞬間を捉えるには至っていないものの,蛍光顕微鏡像と高速原子間力顕微鏡像との相関イメージングによって,細胞膜直下のクラスリン被覆小胞とDNAオリガミのシグナルが共局在することがわかり,当該ナノ構造体がクラスリン依存的経路で細胞内に取り込まれうることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画は概ね順調に進展している.特に,ハイブリッド顕微鏡システムの安定性の向上により,長時間観察が可能となり,細胞膜直下の小胞の動きとDNAオリガミの局在を相関イメージングできたことは大きな進歩である.これにより,DNAナノ構造体が細胞膜上から細胞膜下に至るまでの一連の過程を細胞膜の形態変化や関連タンパク質の局在と相関させながら,一度に可視化できる可能性が強まった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は,前年度に構築した形状・サイズが異なる種々のDNAナノ構造体についても同様の相関イメージングを進める.クラスリン以外にカベオリンなど他のエンドサイトーシス関連のタンパク質についても蛍光タンパク質融合型タンパク質を培養細胞内に発現させ,原子間力顕微鏡像で観察される細胞表層の孔形成がどの経路のものなのか特定できるようにする.この状態で,一連の DNAナノ構造体の取り込みを直接可視化し,それぞれの経路に特徴的な細胞表層の形態・構造変化を解析・描出する.さらに,ナノ構造体側にも蛍光修飾を施すことで共局在の定量解析をおこなう.DNAナノ構造体が細胞膜表層に接触・局在した前後のどのタイミングで各種タンパク質の集積や共局在が起こり,それらが内在化の進行とともにどのように変化していくのか定量し,原子間力顕微鏡像と相関させる.光刺激などの外部刺激に応答して形状が変化するナノ構造体を作製し,その変化によって内在化の経路が変更されるのかについても検証する.
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