研究課題
本研究では,核酸ナノ構造体と多数の構成要素からなる生細胞表層との相互作用を,蛍光顕微鏡一体型のライブセル観察用高速原子間力顕微鏡を用いて可視化解析する。核酸ナノ構造体の局在と動態,生細胞表層の形態化,そして,関連タンパク質の局在を同空間・同時間軸上で統合的に解析することで,人工物である核酸ナノ構造体と生きた細胞膜との機能的・構造的相互作用を分子レベルで明らかにすることを目的としている。研究に用いる核酸ナノ構造は,形状,サイズ,物理的性質などを自在に設計できるDNAオリガミ法により作製した。細胞培養液中および細胞培養環境下におけるDNAナノ構造の安定性については,生化学的な解析と原子間力顕微鏡による1分子イメージングによって評価を行い,37℃,DMEM培地中においては,当該DNAナノ構造の分解が認められないことを支持する結果を得た。前年度から続く蛍光顕微鏡像と高速原子間力顕微鏡像(高速AFM像)との相関イメージングによって,研究代表者が作製したDNAナノ構造一部について,高速AFMで観察される細胞膜直下の小胞様構造とEGFPクラスリンの蛍光シグナル,および蛍光標識したDNAナノ構造のシグナルの動態および局在が一致する結果が得られ,当該DNAナノ構造がクラスリン依存的エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる可能性が示唆された。さらに,その後のDNAナノ構造の細胞内運命を追跡する目的で,後期エンドソームのマーカータンパク質であるRab7との共局在を共焦点レーザー顕微鏡により解析したところ,蛍光標識したDNAナノ構造との共局在を示す結果が得られた。これらの結果から,細胞表層でクラスリン依存的経路によって取り込まれたDNAナノ構造が,エンドソームに内包され細胞内部へと輸送されることが示唆された。一方で,エンドソームに内包されたDNAオリガミが,その構造を維持しているか否かについてはより詳細な検討が必要である。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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