研究課題/領域番号 |
19H04202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 大祐 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (60756732)
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研究分担者 |
森本 淳平 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (70754935)
田部 亜季 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (60786367)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体設計 / 分子シミュレーション / 分子設計 / 分子デザイン / 単ドメイン抗体 / Supercharging / 蛋白質工学 / 抗体工学 |
研究実績の概要 |
2021年度は、(1)抗体のフォールディング機構と物性・機能解析、(2)抗体の分子デザイン、(3)単ドメイン抗体の立体構造分類を実施し、それぞれ以下の成果を得た。 (1) 7種の単ドメイン抗体のフォールディング機構のシミュレーション解析および実験による物性・機能測定を実施した。単ドメイン抗体の特徴の1つとして、その巻き戻り(リフォールディング)のしやすさが知られている。昇温前後で抗原に対する結合性をELISAで測定したが、今回扱った7種の抗体では予想どおりのリフォールディングが見られた。一方で、熱安定性をDSCにより測定したところ、7種の抗体で大きな違いが見られた。これらの実験結果を解釈するために、分子動力学計算を実施し、熱安定、フォールディング機構および機能の関連を精査している。 (2) タンパク質の表面に荷電性のアミノ酸を導入することで、その物性を向上させる「Supercharging」という技術が知られている。抗リゾチーム抗体に対してSupercharging計算を実施し、その物性および機能を実験的に測定した。リゾチームの実効電荷はプラスであるにも関わらず、実効電荷をプラス10にしたデザイン抗体は、野生型と同等な結合性を持つことを示した。また、熱安定性に関しては、Supercharging抗体はpH変化に対してロバストであることを明らかにした。 (3) 昨年度に引き続き、立体構造が既知の単ドメイン抗体に基づき、その多様なCDR-H3の立体構造を分類し、アミノ酸配列との相関関係を明らかにした。これらの知見は、単ドメイン抗体の「立体構造予測」や「合成ライブラリ設計」に役立つことが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに、コンピュータ設計により、複数の異なる抗体の熱安定性や抗原への結合能の向上に成功している。また、抗体の熱安定性、抗原認識能に加え、当初の予定にはなかった抗体のフォールディング機構まで考慮した解析を実施できている。さらに、当初予定していた少数変異導入による抗体の物性機能向上に加え、Superchargingデザインを実施し、実験での検証まで行うことができたた。さらに、本助成による成果が注目され、海外のグループと共著で総説を発表するにも至っている。
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今後の研究の推進方策 |
抗体の合理的な物性改変・親和性向上に加え、「特異性」に着目した分子設計を行う。物性に関しては熱安定性だけでなく、コロイド安定性も解析する。また、抗原の揺らぎにも着目した分子設計を行う。以下の3点を実施する。 (1) 配列相同性の高い2つの抗原を認識する多重特異性を持つ抗体の分子設計を目指す。 (2) 抗原の揺らぎの状態が抗体の分子認識能に与える影響を解析する。さらに、抗原の揺らぎを制御することで、抗体の機能を向上させることを目指す。 (3)「量子化学計算」を用いて、抗体抗原相互作用を評価する。その結果に基づき、量子化学効果を考慮した新たな分子設計手法を開発する。さらに、「機械学習」を用いて、シミュレーションによる分子設計の精度を向上する。
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