研究課題/領域番号 |
19H04203
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青西 亨 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (00333352)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | カルシウムイメージング / 自動細胞検出 / ニューロピル信号 / 動的モード分解 / 非負値行列因子分解 |
研究実績の概要 |
低計算コスト細胞検出アルゴリズム(LCCD)の改良: 申請者は、超広視野光学顕微鏡で取得される超巨大イメージングデータから高速に細胞検出を行うことができる低計算コスト細胞検出アルゴリズム(LCCD)を開発している。LCCDを実現する際の最大の問題は、ニューロピル活動によるバックグラウンド蛍光変化を、如何に単純で高速なフィルタ処理で除去するかであった。現時点でのLCCDでの細胞検出失敗の主な要因は、ニューロピル活動に起因するものである。イメージングデータからニューロピル信号をより高精度に除去することができれば、LCCDの性能が大幅に向上することが期待できる。ニューロピル信号は短時間では定常信号として取り扱うことが期待できる。この短時間の定常性が成り立っていれば、短時間であれば単純なフィルタリングでニューロピル信号の削除は可能である。我々は以下のアルゴリズムを考案し、プログラムを開発した。イメージングデータを短時間のフレームに分割し、分割したフレーム毎にフィルタリングによるニューロピル信号の削除と細胞検出を行い、分割したフレーム毎の検出細胞結果を統合するアルゴリズムである。実データを用いて、提案アルゴリズムと従来のLCCDを比較し、性能が飛躍的に向上したことを確認した。また、細胞検出器にニューロピル動態の簡単なモデルを組み込みこんだSuite2Pや広く認知されているCNMFに匹敵する性能が実現できていることを確認した。 研究成果は、bioRxiv (https://doi.org/10.1101/502153)にプレプリントとして公開した。また、人工知能学会第3回計測インフォマティクス研究会での招待講演にて、本成果の発表をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ディープラーニングモデル: 申請者は、ディープラーニングモデルによる細胞検出手法の開発を行っている。ディープラーニングモデルの研究が遅延している。先行研究での報告を再現しようと試みたが、報告に記載されていないブラックボックスの部分があり、報告にあるような高い細胞検出性能が実現できず、研究開発に苦戦している。今年度は、今後の研究の推進方策で述べる研究に集中する。
|
今後の研究の推進方策 |
低計算コスト細胞検出アルゴリズム(LCCD)の改良:今年度は、数理モデルより生成した人工データを用いて提案手法の推定精度を詳細に評価し、これらの結果を取りまとめて投稿論文を執筆する予定である。 多重解像度非負値行列の改良:申請者は、非負値行列因子分解(NMF)にもとづく自動細胞検出手法を開発してきた。今年度は、NMFを多重解像度に拡張した多重解像度NMFの改良発展を行う。今年度は、分解する行列のランク数の推定、すなわち分解する要素数の推定を試みる。我々は、吸収スペクトルイメージデータをNMFで分解する課題において、Bi-Cross-Validation を用いてモデル選択を実施し、この手法の有効性を確認している。Bi-Cross-Validation をこの自動細胞検出の課題に適用する。また、ニューロピル動態モデルをNMFに組み込むことにより、その性能を向上させる。この改良により、多重解像度NMFの推定精度の大幅な向上を目指す。 動的モード分解:近年、大自由度力学系の縮約手法として注目され始めているのが、動的モード分解(Dynamic Mode Decomposition, DMD)である。この手法は、流体力学分野で発展している手法であり、不規則な流れの変動を伴う乱流状態も取り扱うことができる。近年、流体以外の様々な大自由度非線形力学系の解析にもDMDを適用する動きがある。ニューロピルの時空間動態は複雑であり、このような時空間動態を解析するのにDMDは適切であると、申請者は考えている。広視野イメージングデータにスパースDMDを適用して、大域的ニューロピル時空間動態を構成するDMDモードを抽出することを目指し、スパースDMDを本問題に適用できるように改良し、アルゴリズムのプログラム実装を行う。
|