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2020 年度 実績報告書

制御信号系列によって多機能性を実現する分子計算システムの理論とその設計基盤の構築

研究課題

研究課題/領域番号 19H04204
研究機関電気通信大学

研究代表者

小林 聡  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50251707)

研究分担者 小宮 健  東京工業大学, 情報理工学院, 助教 (20396790)
藤本 健造  北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (90293894)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード分子ロボティクス / 分子計算 / DNAコンピュータ
研究実績の概要

2019年度までに,生成モデルのタイプと関数計算モデルのタイプの2つの計算モデルを理論研究者と実験研究者の協調により構築し,計算モデルの理論的な解析を遂行してきた.
生成モデルに関しては,DNAナノ構造を生成するシステムの計算モデルとして,未知の振る舞いを持つ右線形文法を外部制御信号系列によって制御する問題の計算論的な解析を行ってきた.2020 年度は,この成果をより洗練すると同時に,単調な制御と非単調な制御の間に計算能力の違いがあることを明らかにした.消去型の場合のみの限定された成果ではあるが,非単調な制御を可能にするデバイス開発の計算論的な重要性を明示した成果である.
関数計算モデルに関しては,Reaction System を2つの外部信号によって単調に制御して任意のブール関数を選択して計算が行える計算モデルを提案してきた.しかし,この計算モデルは,実際の反応系との乖離があった.2020 年度は,DNA 分子による反応系に適合するように計算モデルを改良することを試みた.特に,実験研究者と理論研究者が共同して,この計算モデルを実装できるように改変することに取り組み,温度制御と光制御を組み合わせて実装する手法を考案した.
実験面では,理論解析の結果にもとづいて設計したDNAデバイスについて実験データの集積に着手した.温度制御デバイスについては,入力信号として複数の温度に対する反応を測定し,その結果を理論研究者にフィードバックすることにより,標準的な実験条件では異なる温度に対する反応効率の差がより大きな設計が必要なことを明らかにした.また,光応答デバイスについては,光応答性人工核酸CNVKによってあらかじめ光架橋した二本鎖を出発物質として用いたDNA鎖交換反応解析を試みた。その結果、実際に鎖交換反応を行う温度を考慮する必要があると考え、ミスマッチ導入、架橋位置の検討をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

理論的に大きな進展として,単調な制御と非単調な制御の計算能力の違いを明らかにすることができた.有限な生成条件、および、消去型という計算形式に限られた成果ではあるが、非単調な制御を行うことによって、単調な制御では計算できないことを計算できることを示した.これは,非単調な制御デバイス開発の計算論的な意義を示したものであり、実験研究者側から出された課題を,理論研究者が解決したものである.実験面においては,実験研究者と理論研究者が協調して計算モデルの改変に取り組み,理論研究者が提案したDNA制御デバイスに関する実験データの集積に着手している.特に、実験結果のフィードバックから,制御デバイスの計算精度が大きく計算結果に影響を与える可能性を理論的に示すことに成功しており,すでに、計算モデルの改変に着手している.理論だけでなく実験面における共同研究においても成果をあげつつあり、研究計画は順調に進展していると考えられる.

今後の研究の推進方策

理論面においては,単調な制御と非単調な制御の計算能力の違いについて,より詳細かつ広範な解析を実施する.これにより,非単調な制御の計算論的な意義を正確に分析することが可能となる.また,実際のDNA分子の反応系に適合した Reaction System を提案することにより,実験研究と理論研究が密接につながった計算モデルと数理解析を遂行することを目指す.これまでの多くの理論研究は,実験と乖離した側面があり,これを解消することにより,真の理論と実験の協調を目指す.
実験面においては,すでに得られた実験データを分析して現在改良を試みている計算モデルの基礎実験データを集積することに着手する.このようなフィードバックをできるだけ多く繰り返すことにより,多機能DNAコンピュータを設計するための設計基盤を構築する.

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Reducing control alphabet size for the control of right linear grammars with unknown behaviors2021

    • 著者名/発表者名
      Nobuya Kimoto, Shigetaka Nakamura, Ken Komiya, Kenzo Fujimoto, Satoshi Kobayashi
    • 雑誌名

      Theoretical Computer Science

      巻: 862 ページ: 193-213

    • DOI

      10.1016/j.tcs.2020.11.051

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The effect of 5-substituent in cytosine to the photochemical C to U transition in DNA strand2021

    • 著者名/発表者名
      Kenzo Fujimoto, Wan Licheng, Shigetaka Nakamura
    • 雑誌名

      Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters

      巻: 35 ページ: 127812

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2021.127812

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Complete Photochemical Regulation of 8-17 DNAzyme Activity using Reversible DNA Photo-cross-linking2020

    • 著者名/発表者名
      Yasuha Watanabe, Kenzo Fujimoto
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 21 ページ: 3244-3248

    • DOI

      10.1002/cbic.202000227

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photochemical RNA editing of C to U using ultrafast reversible RNA photo-cross-linking in DNA/RNA duplexes2020

    • 著者名/発表者名
      Shigetaka Nakamura, Kanako Ishino, Kenzo Fujimoto
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 21 ページ: 3067-3070

    • DOI

      10.1002/cbic.202000269

    • 査読あり
  • [学会発表] On the control of R systems2021

    • 著者名/発表者名
      Ryutaro Yako, Satoshi Kobayashi
    • 学会等名
      26th International Conference on DNA Computing and Molecular Programming
    • 国際学会
  • [学会発表] 未知の振る舞いを持つ制御付き右正則文法の生成能力について2021

    • 著者名/発表者名
      伊勢大平,小林聡
    • 学会等名
      電子情報通信学会,コンピュ―テーション研究会
  • [学会発表] DNAコンピューティングによる“機器不要”診断薬の創製に向けて2021

    • 著者名/発表者名
      小宮健
    • 学会等名
      バイオインダストリー奨励賞受賞者セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] Optimization of the multi-step DNA computing reaction that implements a state machine2020

    • 著者名/発表者名
      Shuntaro Sato, Masayuki Yamamura, Ken Komiya
    • 学会等名
      第58回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Optimization of the multi-step DNA computing reaction using oxDNA MD simulation2020

    • 著者名/発表者名
      Shuntaro Sato, Masayuki Yamamura, Ken Komiya
    • 学会等名
      CBI学会2020年大会
  • [学会発表] 分子ロボット将来像の共創に向けて2020

    • 著者名/発表者名
      小宮健
    • 学会等名
      第4回分子ロボティクス年次大会

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公開日: 2021-12-27  

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