過去2年間の研究開発で、臓器連関システムのマルチスケール数理モデルはほぼ完成した。最終年度は、下記の研究を実施した。(1)マルチスケール数理モデルの生物学的妥当性解析:2型糖尿病のインスリン抵抗性の病態を再現する数理モデルを構築して,食後,空腹時の条件で,血漿中の基質・生成物濃度の時間変化を予測した.研究協力者の酒井と共同して,各条件下で生物学的データと予測結果の一致することを確認した.血液回路の完全混合流れ,臓器の平均化代謝流束の仮定の問題点,あるいは,その妥当性を検討した.臨床実験の代替可能性について考察した.(2)糖尿病治療薬の効果予測:酒井と共同して,3種類の経口血糖降下剤:インスリン抵抗性改善系(メトホルミン),インスリン分泌促進系(DPP-4阻害剤),糖吸収排泄調節系(SGLT2阻害剤)の応答をモデルで予測して,実験データと比較した.具体的には,数理モデルを用いて,薬が作用する酵素の活性を調節して,多剤併用療法が臓器連関システム全体に与える影響をシミュレーションした.開発したシミュレータをサーバー上に公開した.
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