研究課題/領域番号 |
19H04213
|
研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
矢野 博己 川崎医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (20248272)
|
研究分担者 |
中井 雄治 弘前大学, 地域戦略研究所, 教授 (10321788)
長野 隆男 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (20304660)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | TLR5 / Tlr5遺伝子欠損マウス / 腸内細菌叢 / 短鎖脂肪酸 |
研究実績の概要 |
Toll 様受容体 (TLRs) は、病原体関連分子の認識を介して自然免疫応答の中心的な役割を果たす受容体で、その中でも腸管に高発現するTLR5機能を欠いたマウスでは、インスリン抵抗性、および肥満を発症し、一方で自発運動習慣によって劇的に肥満が抑制される。この要因には、腸内細菌叢の変化が挙げられるが、菌の絞り込みに至っていない。本研究では、菌のスクリーニングを試み、さらに、腸内細菌由来の短鎖脂肪酸についての検討を行った。 実験には、TLR5遺伝子欠損型 (KO5) および野生型 (WT) 雄マウス (C57BL/6, 4週齢)を使用し、それぞれに20週間の自発運動(W)、または安静(C)を負荷した。糞便から腸内細菌を同定、盲腸内短鎖脂肪酸を測定した。腸内細菌の可視化には、Volcano Plots法を用いた。KO5Cマウスは、WTCマウスと比較して高い体重増加を示し、また運動による顕著な体重増加抑制が示された。腸内細菌叢のα-多様性は、KO5マウスで高く、自発運動の有無による違いはなかった。β-多様性も、遺伝的影響が反映された。腸内細菌由来の短鎖脂肪酸では、酢酸、およびプロピオン酸がKO5マウスで高く、運動で有意な低値を示した。酪酸に変化はなかった。Volcano Plotsで種レベルの抽出を試みたところ、Parabacteroides distasonisが示された。P. distasonisは、抗炎症性サイトカインの誘導、炎症性サイトカインの分泌抑制、腸内細菌叢の安定化のほか、T regの誘導、TLR4/Aktシグナル抑制、肥満患者で少なく、動物実験でも肥満を軽減させる。自発運動を負荷することでKO5マウスの腸内細菌叢で著しく変動した腸内細菌の中で、代謝・免疫に関与する菌のスクリーニングから、P. distasonisが抽出された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
他施設利用による動物実験のため、複数の動物実験委員会倫理審査、またノックアウトマウス使用ための組換えDNA実験安全委員会審査が必要だったものの、全て完了できた。さらに、ノックアウトマウス作成についても、胚を購入した繁殖にやや時間を要したものの、こちらも解決できたが、申請した研究期間内での完了とならなかった。また、一方で、随時購入していた対照群(野生型マウス)の表現型が安定せず、表現型の再現性に難点が生じており、本格的な研究には更なる時間を必要とする状況が続いている。COVID-19感染拡大を受け、引き続き動物実験実施も予断を許さない状況が続いている点も懸念材料である。
|
今後の研究の推進方策 |
リタ―メイトコントロール群を野生型マウスとして使用することで、遺伝的バックグラウンドを極力そろえた実験系でより精度の高い研究を遂行する。
|