研究課題/領域番号 |
19H04216
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
藤田 桂英 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00625676)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マルチエージェントシステム / 自動交渉 / 自然言語処理 / 合意形成支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、エージェントが人間同士の自然言語による交渉に介入し、適切な合意案をフィードバックする方法論を明らかにすることを目標とする。さらに、人間の交渉参加者同士が自然言語での交渉中に人工知能が交渉参加者の効用を自動的に推定し、合意案を予測しながら、適切にフィードバックするWebシステムの実現を目指す。上記のシナリオの実現のためには、交渉ダイアログからの効用推定、合意案の予測、合意形成のためのフィードバックに対して、学術的観点からの解明、システムとしての実装とその検証が必要となる。そこで、以下の4つの目的を設定する。 (1) 自然言語交渉ダイアログからの効用推定法を解明 (2) 交渉シミュレーションによる適切な合意案の予測法の解明 (3) 現実の人間同士の交渉を合意へ導くフィードバック法の解明 (4) (1)~(3)を融合したWebシステムの構築と現実問題への適用可能性の検証 まず、自然言語交渉ダイアログからの効用推定のために、交渉における論点数が多い場合や論点間に依存関係がある複雑な交渉ダイアログデータにおいて高い性能で効用推定を行うことが可能な手法の開拓を行った。新たに提案した効用推定手法は、最新の自然言語処理に関する機械学習のアプローチで目標とする精度を達成した。最終的に、現実的な交渉問題設定(論点数が多い、論点間に依存関係が存在)において、新たに提案する手法が、高い精度で交渉参加者の効用を推定できることを明らかにした。さらに、深層強化学習に基づいた新たなEnd-to-Endの学習フレームワークを考案し、現実的なリスポンスタイムでシミュレーションを実行可能で、適切な合意案を発見できることを明らかにした。また、交渉過程の可視化や複数の合意案候補とその選択理由を示すフィードバック法の検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 自然言語交渉ダイアログからの効用推定法の開拓: 交渉における論点数が多い場合や論点間に依存関係がある場合のような複雑な交渉ダイアログデータの作成とそれらのデータにおいて高い効用推定を行うことが可能な手法の提案を行なった。これまで構築してきたアノテーション済データを活用しながら、新たにBERT、GRU、Fine Tunningのような最新の自然言語処理分野の機械学習アプローチを導入することで、目標とする性能で交渉ダイアログからユーザの効用推定に成功した。また、現実的な交渉問題設定(論点数が多い、論点間に依存関係が存在)において、新たに提案する手法が、高い精度で交渉参加者の効用を推定できることを明らかにした。 (2) マルチエージェント自動交渉による交渉シミュレーション法の実現: 自動交渉戦略の獲得のために深層強化学習に基づいた新たなEnd-to-Endの学習フレームワークを考案し、自動交渉エージェント競技会(ANAC)の優勝エージェントとの交渉シミュレーションにより提案したアプローチに基づくエージェントが高性能な交渉戦略でありことを示した。また、深層強化学習によるエージェント戦略の動きの特徴を解析により明らかにした。 (3) 現実の人間同士の交渉を合意へ導くフィードバック法の開拓: 人間の交渉は自然言語であることから、本年度は、自然言語文による問いかけでフィードバックすること検証した。問いかけ文の自動生成には、End-to-End深層学習による自然言語文生成手法の検討を中心に行なった。 (4) Webシステム構築と実ドメインへの適用:ユーザがフォームに自然言語で投稿し、交渉を行いながら、適切なタイミングで各機能が動作するシステムを構築を目指して、製造サプライチェーンの並列的に交渉が行われるユースケースを実ドメインとして対象にすることを決定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、各研究目標に関して、以下のように研究を進めていく。 (1) 自然言語交渉ダイアログからの効用推定法の開拓、および、(2) マルチエージェント自動交渉による交渉シミュレーション法の実現に関して、強化学習によるアプローチを中心にこれまで想定していなかった新しい知見を得たため、引き続き研究を進めていく。 さらに、最終目標であるエージェントが人間同士の自然言語による交渉に介入し適切な合意案をフィードバックする方法論の解明のため、今後、以下の(3)、(4)を中心に研究を進める。 (3) 現実の人間同士の交渉を合意へ導くフィードバック法の開拓: 自然言語文による問いかけによる交渉の合意へ導くフィードバック法を検証する。問いかけ文の自動生成には、End-to-End深層学習による自然言語文生成手法、もしくは、問いかけテンプレート活用した手法を用いる。さらに、交渉過程の可視化や複数の合意案候補とその選択理由を示すフィードバックも検討する。最終的に、様々な方法でのフィードバックに対して、現実世界の交渉や合意形成に影響を与えるかを解析し明らかにする。 (4) Webシステム構築と実ドメインへの適用: ユーザがフォームに自然言語で投稿し、交渉を行いながら、適切なタイミングで各機能が動作するシステムを構築する。さらに、実ドメインとして、製造バリューチェーンにおける並列的な交渉問題を対象に、新たな交渉支援システムを動作させ、有効性を評価する。特に、対象とするドメインでは並列交渉が重要となるため、それらに関連した内容を進める。また、自動交渉エージェント競技会 (ANAC) のSupply Chain Management League (SCML)に関する調査と解析を実施する。
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