本研究では、エージェントが人間同士の自然言語による交渉に介入し、適切な合意案をフィードバックする方法論を明らかにすることを目標とする。さらに、人間の交渉参加者同士が自然言語での交渉中に人工知能が交渉参加者の効用を自動的に推定し、合意案を予測しながら、適切にフィードバックするWebシステムの実現を目指す。上記のシナリオの実現のためには、交渉ダイアログからの効用推定、合意案の予測、合意形成のためのフィードバックに対して、学術的観点からの解明、システムとしての実装とその検証が必要となる。そこで、以下の4つの目的を設定する。 (1) 自然言語交渉ダイアログからの効用推定法を解明 (2) 交渉シミュレーションによる適切な合意案の予測法の解明 (3) 現実の人間同士の交渉を合意へ導くフィードバック法の解明 (4) (1)~(3)を融合したWebシステムの構築と現実問題への適用可能性の検証 深層強化学習に基づいた新たなEnd-to-End学習フレームワークを考案し、現実的なリスポンスタイムで交渉シミュレーションを実行可能で、適切な合意案を予測できることを明らかにした。本成果は人工知能分野のトップカンファレンスであるAAAI2023にて発表した。その他にも、より現実的な問題設定である並列交渉問題に対して、深層強化学習により適切に交渉を行う交渉戦略を獲得できることを明らかにした。本成果は、情報処理学会全国大会などに発表している。また、交渉過程の可視化や複数の合意案候補とその選択理由を示すフィードバック法の検討を進めた。さらに、上記の目的(1)~(3)を融合した交渉プラットフォームとしてNegoSimを開発し、国際論文誌Applied Sciencesに発表した。
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