本研究の目的は、情報の均質化と社会的分断を助長する「エコーチェンバー」という現象を克服し、情報の多様性を促進する新たなソーシャルネットワーキングの原理を提案することである。これは、本来、集合知のプラットフォームとして多様な情報と人々を繋げるべきソーシャルメディアの役割を再評価するものである。その目的達成のために、まず、Twitterから投稿や社会的なつながりに関するデータを大規模に収集し、複数のエコーチェンバーの事例を定量的に分析し、情報環境の均質化と分断化のメカニズムを詳細に検討した。米国政治、LGBT、食(オーガニック、ファストフード)、反ワクチン運動など、多岐にわたるトピックについて、エコーチェンバーの実態と性質が明らかになった。次に、この知見に基づき、フェイクニュースの拡散要因を深く掘り下げるための実験デザインを考案した。具体的には、インターネットを通じて、2480人の被験者を集め、 政治・経済、科学、ゴシップ、そして新型コロナウイルスの4つのトピックに関する正確なニュースを作成し、実験のニュース素材とした。被験者には、これらの ニュースをランダムに提示し、できるだけ少ない変更で多くの人に共有されやすいフェイクニュースに書き換える作業を依頼した。そして、予備調査と本調査を実施し、怒りを表す言葉や否定的な言葉、誇張表現の使用頻度の増加が明らかとなった。これらの結果は、エコーチェンバー内で拡散されるフェイクニュースが持つ可能性のある言語的特徴を示唆している。本研究の結果は、情報多様性を促進する新しいソーシャルネットワーキング原理の重要な基盤を提供する。
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