研究課題/領域番号 |
19H04219
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
牛尼 剛聡 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (50315157)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 協調フィルタリング / 共感的フィルタリング / SNS / 実況ツイート / ソーシャルビューイング / 情報推薦 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ユーザの価値観に基づいた新しい協調的フィルタリング手法を開発することである.協調的フィルタリングは,他者が行った評価を利用してアイテムの価値を予測する推薦手法であるが,一般的な協調的フィルタリングでは,ユーザの価値観の影響を考慮できていないことが問題である.本研究では,この問題を解決するために,ユーザの評価に対する評価(メタ評価)を共感として捉え,共感を利用することでユーザの価値観を推定し,価値観に基づいた推薦を実現する新しい協調フィルタリング手法である「共感フィルタリング」を開発することを目的とする.本研究では,「共感フィルタリング」の代表的な手法として「レビューベース共感的フィルタリング」および,「リプライベース共感的フィルタリング」の2種類の手法の開発を行うことを目的とする. 「レビューベース共感的フィルタリング」では,商品レビュー等の対象に対するレビューを,ユーザの商品に対する興味として捉え,それに対してユーザが共感できるかどうかに基づいて,対象の選別等に応用することを考える.「レビューベース共感的フィルタリング」のアプローチは,単に従来型のアイテム推薦を行うために利用されるばかりでなく,様々な発展的な応用を考えることができる.本研究では,TV番組を視聴中に,SNSにテレビ番組の感想を投稿するソーシャルビューイングにおけるユーザの投稿もレビューの一形態であると考える.そして,そのレビューを適切に処理することにより,ユーザに対するTV番組の新しい形の視聴支援サービスが実現できると考えている. 「リプライベース共感的フィルタリング」では,SNSに投稿されたニュース記事に対して付与されたリプライを利用して,効果的なニュース理解の支援を行うサービスを検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「レビューベース協調的フィルタリング」の実現のために,まず,書籍レビューを対象にしたレビュワー推定モデルを開発した.これは,深層学習を用いて,レビューからレビュワーらしさを予測することが可能となる.これにより,ユーザが未知のレビューに対しても,そのレビューに対してユーザが共感するかどうかを予測することができるようになった.インターネット上の書籍レビューサイトから大量のデータを収集し,提案モデルの性能の評価を行った. 一方,「レビューベース協調的フィルタリング」の別の応用として,スポーツ中継を対象として,ユーザが好む場面をリアルタイムに体験できるサービスの設計と基本的なアルゴリズムの開発を行った.このサービスでは,スポーツ中継の内容に合わせて代表的なSNSであるツイッター上に投稿される実況ツイートを利用する.実況ツイートは,視聴中のTV番組に対するユーザの感想や意見を反映したものであり,レビューの一種であると考えることができる.そこで,本システムでは,実況ツイートを分析することにより,ユーザが興味がある場面の発生を予測して,ユーザに通知することで,ユーザが興味がある場面をリアルタイムに体験することを支援するものである.今年度は,日本で開催されたプロ野球に対する大量の実況ツイートを収集し,ツイートから状況を推定するための基本的なアルゴリズムの開発と検証を行った. 「リプライベースの協調的フィルタリング」としては,ツイッターに登校されたニュース記事に対するリプライを収集し,ニュース記事本文の特徴と,それのリプライの特徴から,ニュース記事のコンテクストを表す特徴を抽出する手法の検討を行った.本年度は,様々な重み付け手法を考察し,被験者による主観評価の結果を正解データとして,どの重み付け手法がコンテキストの抽出に有効的かについて分析した.
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今後の研究の推進方策 |
書籍レビューに基づいた「レビューベース協調的フィルタリング」に関する研究では,令和元年度に開発したレビュワー推定モデルに基づいて,未知のレビューに対するユーザの共感性を推定するためのモデルを開発して,評価実験により有効性を評価する. 一方,ソーシャルビューイングにおける実況ツイートを利用した「レビューベースの協調的フィルタリング」に基づく,ユーザのスポーツ中継視聴支援に関する研究では,令和元年度において開発したツイートのエンコーディング手法を利用して,ユーザが興味を持つ様々な場面を抽出可能であるかについて検証する.ここでは,スポーツ中継が行われる時間区間を数分程度の時間窓に分割し,時間窓ごとにそれが対応する場面の状況を,実況ツイートに基づいて特徴ベクトルとして表現する.次に,被験者に対するアンケートにより,ユーザが興味を持つ可能性がある場面を列挙し,実際の試合における実況ツイートを利用して,それらがどの程度の精度で予測できるかについての評価を行う.さらに,実用的なサービスに向けて,リアルタイムでユーザに通知を行う実験も開始する. SNSに投稿されたニュース記事に対する「リプライベースの協調フィルタリング」では,令和元年度に収集したデータを利用して,これまでに開発したニュース用の特徴ベクトルとリプライ用の特徴ベクトルの演算により,コンテキストを抽出する演算を開発する.ニュース用の特徴ベクトルとリプライ用の特徴ベクトルのいくつかの重み付け手法の組み合わせパターンそれぞれに対して,コンテキストを抽出する演算の結果と主観評価による印象の相関を評価することで,コンテキストを抽出するのに適したアルゴリズムを開発する..
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