研究課題/領域番号 |
19H04232
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
棟方 渚 京都産業大学, 情報理工学部, 准教授 (30552351)
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研究分担者 |
大澤 博隆 筑波大学, システム情報系, 助教 (10589641)
伊藤 毅志 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40262373)
松原 仁 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (50325883)
片上 大輔 東京工芸大学, 工学部, 教授 (90345372)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 完全統制実験 / 人狼ゲーム / 皮膚電気活動 / プロの人狼プレイヤ |
研究実績の概要 |
当該年度に実施したことは,次年度実施予定である完全統制実験のための準備である.具体的には,人狼ゲームの複数人の被験者の生体信号,ジェスチャや姿勢,音声情報などを同時測定・時間同期を可能とするシステム構築を行った.加えて,生体信号の処理について,人狼ゲーム特有の分析手法を検討するために,特徴量の抽出を行うための手法の検討を行った.生体信号については,BIOPAC Systems社製のテレメータ式脈波・皮膚電気活動アンプを購入し,予備実験を行うなどして,測定準備を行った.また,共同研究者との密なミーティング(メール,ビデオ会議,対面)により,完全統制実験の方向性や設定などの議論を重ね,詳細を詰めている.完全統制実験の予備的な実験を,片上氏,伊藤氏,棟方の方で行っており,一定の準備が完了している.本研究で行う実験は,十分に熟達したプロの人狼プレイヤ(本業はプロの役者)を対象としており,時間的・物理的な制約が厳しいことが予想されるため,完全統制実験の成功にむけて,入念な準備を必要とする.加えて,1回のゲームについて30分程度,5名のプレイヤの生体信号の同時測定という前代未聞の方法で取得する計画であるため,起こり得る様々な事象に対処できるようシミュレーションを行い,システム構築を行った.構築したシステムについて,実際にダミー(5体分)の皮膚電気活動発生装置を装着させ,測定装置を稼働させて,テストを行っている.現在のところ,十分に実験可能なところまで準備が終了している状況である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度には,研究代表者の棟方が産休・育休で一時的に研究を停止している期間があったが,他の共同研究者や,本科研費に関連する研究を遂行している院生などのおかげで,概ね順調に進展させることができた.特に,休職中は人狼ゲームのプレイヤの生体信号の分析手法について様々な手法の検討を行っていた.人狼ゲームの各フェーズ(初日の夜,初日の会議,投票,2日目の夜,2日目の会議,投票)の生体信号の挙動を分析し,それぞれの特徴を抽出した.皮膚電気活動は個人差も大きく,ゲーム状況にも大きく依存するため,そこから特徴を抽出することは困難である.分析手法の検討には,6カ月程度の時間を要したが,各フェーズのうち,特に「初日の会議」時に特徴がみられた.また,その特徴は勝率の高いプレイヤと低いプレイヤでは異なる特徴を有していることが示された.人狼ゲームの強さ,を理解する上で非常に有益な情報を得ることができた.非常に時間のかかる方法ではあるが,現在も分析手法の検討は継続して行っており,この成果は,人狼ゲームに関わらず,生体信号によるユーザ評価といった分野に貢献すると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,1年目に実験準備(計測システムの構築と分析手法の検討)で,2年目に実験の実施を予定していたが,新型コロナウィルス感染症の影響により,実験の実施は難しいと考えられる.人狼ゲームは最低でも5名,司会1名の計6名のプレイヤを要し,コミュニケーションをベースとするゲームであるため,プレイヤ間の距離は近い.加えて,実験の場合は,ジェスチャの測定(約2名),音声の測定(約4名),生体信号の測定(約4名),カメラによる記録(約2名)など,ある程度の人数を要し,常に操作を必要とするため,いわゆる3密の状態で行われる.また,共同研究者の集合した場合,北海道,京都,東京と,どの地域も新型コロナウィルスの感染の危険を有しており,実験を行うことは難しいと考える.まだ,これからどのような状況になるのかは予測できないが,現状では,本年度実施予定の実験を来年度以降とするなどスケジュールの変更は免れないと考えている.その場合は,全体計画の練り直しが必要となるため,慎重に進めていきたい.
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