研究課題
本研究では、実大気中の有機エアロゾルの光吸収特性(340-870 nm)に関する新たな定量的な観測的知見(Aerosol Absorption Optical Depth (AAOD; 吸収エアロゾル光学的厚さ)やAbsorption Angstrom Exponent(AAE; 吸収オングストローム指数))を得るとともに、その光吸収特性の変動要因を明らかにする。独自に世界展開している国際観測網を活用し、エアロゾル特性が明瞭に異なる5つもの主要な観測地点 (日本3地点、タイ1地点、インド1地点)に焦点を当てる。独自の紫外~可視の光吸収特性の長期連続観測技術、および、その変動要因の重要なフィンガープリントをもたらす有機ガス濃度等の観測技術の両方を世界で唯一有する本研究グループのみが可能な研究である。全球化学気候モデル・衛星データも援用した研究体制で相乗的な研究成果を挙げ、有機エアロゾルの光吸収特性に関する研究を推進する。R01年度は、当該研究が対象とするユニークな5つの観測地点(千葉、福江島、春日、タイ・ピマイ、インド・パンテナガール)それぞれにおいて、必要な地上リモートセンシング観測装置(スカイラジオメーターとMAX-DOAS)を整備し、長期連続観測を開始した。しかしながら、うち2つの国際サイトいついては、新型コロナウイルスの影響のため、十分な現地でのメンテナンスができていない状況である。他方、本研究の全球化学気候モデル(CHASER)については、植物起源VOCsや二次有機エアロゾル(SOA)生成・消滅の計算スキームの改良・調整を行い、CHASER計算に不可欠な、揮発性有機化合物(VOCs)等のエミッションインベントリー等の整備も行った。変動要因解析に有用な他衛星データ(MODIS、OMI、TROPOMI等)、トラジェクトリー計算、FLEXPARTモデルの整備も進めた。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、当該研究が対象とするユニークな5つの観測地点(千葉、福江島、春日、タイ・ピマイ、インド・パンテナガール)それぞれにおいて、必要な地上リモートセンシング観測装置(スカイラジオメーターとMAX-DOAS)を整備し、長期連続観測を開始した。しかしながら、うち2つの国際サイトについては、新型コロナウイルスの影響のため、現地でのメンテナンスができていない状況である。他方、並行して、全球化学気候モデル(CHASER)の計算に不可欠な、揮発性有機化合物(VOCs)等のエミッションインベントリー等の整備を行った。変動要因解析に有用な他衛星データ(MODIS、OMI、TROPOMI等)、トラジェクトリー計算、FLEXPARTモデルの整備も進めた。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
本研究で対象とする5地点で長期連続観測を継続する。そのために、とりわけ2つの国際サイトについては、現地でのメンテナンスを早急に実施する。そのうえで、各地点において、AAODとAAEを定量的に見積もり、観測的知見を蓄積するとともに、先行研究との相違を明らかにする。エミッションとの関連については、比較的エアロゾルの変動要因が分かっている日本3地点のデータや過去データをリファレンスにし、ピマイやパンテナガールのAAODやAAEの高精度評価につなげる。複数年にわたる長期連続観測を活かし、AAODやAAEを様々な時間スケールで明らかにし、変動要因の解明を念頭に考察を行う。また、MAX-DOAS観測をもとに、光吸収特性の変動要因のフィンガープリントをもたらすガス濃度や濃度比を算出する。有機エアロゾル、特にブラウンカーボンが高濃度となる大規模バイオマスバーニングでは、HCHOやCHOCHO等のガス濃度の増大やCHOCHO/HCHO濃度比の減少が起きることが分かっている。この情報に、衛星データ、トラジェクトリー、FLEXPARTの解析も加え高度な要因解析を実施する。加えて、観測で得られるガス・エアロゾルの濃度情報について、全球化学気候モデルCHASERを用いて、バイオマス燃焼等からの有機エアロゾルの発生起源・寄与を解析する。さらには、観測から得られたAAEで特定されたブラックカーボンとブラウンカーボンのイベントを比べ、両者の光吸収の強さを比較する。このようなエアロゾルの光学特性に関する新たな定量的な観測的知見を拘束条件とし、CHASERモデル内のパラメータを修正するなどして放射強制力の再評価を行い、これまでの知見(例えば、IPCC-AR5,6)からの更新として整理するなど、これまでに実現しなかった放射強制力の議論を行う。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 12件)
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