昨年度までに行った比較ゲノム・メタゲノム・15N安定同位体トレーサーを用いた活性試験からNO2-からNOを生成する過程がアナモックス細菌種によって多様であると考えられた。さらに、共在細菌がNO供給者としてアナモックス反応を制限する可能性が示唆された。そこで、複数回のメタゲノム解析を行い、これをMAPLEによる代謝ポテンシャル解析に供することで、アナモックス群集のアバンダンスを制御する共在細菌の機能を明らかにすることを試みた。アナモックス細菌のアバンダンスは、(1)メタゲノム中のリボソームタンパク配列組成から計算したアバンダンスおよび、(2)メタ16S解析による16S rDNA組成に基づくアバンダンス、の2種類で評価した。脱窒群集のNO供給能の多寡を示す指標として、アナモックス細菌以外の微生物が保有する亜硝酸還元酵素のアバンダンスを用いた場合、この指標はアナモックスのアバンダンス(1)と有意な相関を示さず、(2)とは有意な負の相関を示した(p<0.05)。したがって、長期的なリアクター微生物群集の変動からは、NO供給能を有する脱窒菌のアバンダンスによりアナモックス細菌量が制御される傾向は見いだされなかった。一方で、共在細菌が持つアミノ酸やビタミン合成に関連する代謝機能のうち、アナモックスアバンダンスと有意な相関を示すものが見いだされ、これらの有機物の供給能が、基質アナモックスの生育において重要なファクターであることが示唆された。
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