研究課題/領域番号 |
19H04250
|
研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
平譯 享 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (70311165)
|
研究分担者 |
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50432224)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | CDOM / FDOM / 水塊 / 光吸収 / 蛍光 / 基礎生産 |
研究実績の概要 |
初年度(平成31年度)に黒潮続流域から親潮・沿岸親潮海域で実施した有色溶存有機物(CDOM)や蛍光溶存有機物(FDOM)の観測結果では、仙台湾沖の外洋域において沿岸水の影響が見られた。その起源や三陸沖のCDOMへの影響について調べるための観測を計画していたが、コロナ感染拡大により令和3年度も6月の北大「おしょろ丸」の観測が中止となった。そこで、時期は異なるが、7月末から8月下旬に水産資源研究所 「若鷹丸」に乗船し、仙台湾内においてCTDによる水温・塩分、現場型蛍光センサーによるFDOMの測定を行った。また、海面から底層の海水を採取し、CDOM光吸収係数、植物プランクトンの光吸収係数、栄養塩類等の分析を実施した。これらのデータを用い、仙台湾内の沿岸から沖合にかけてのCDOMおよびFDOMの分布を調べた。また、水塊分類アルゴリズムを再構築し、衛星データを適用した。 表層のCDOM・FDOM値は概して低く、陸に近い表層および底層において高い値が観測された。水温・塩分と比較すると、表層の塩分は低く高いCDOM・FDOM値は河川水の影響と考えられた。一方、底層の塩分は高いため、海底堆積物からの溶出の影響と示唆された。今後、衛星データと比較し、これらの高いCDOMが外洋へ輸送されていたかどうかを確認する。衛星による水塊分類アルゴリズムは、現場データに対して約70%の精度で水塊を判別できたが、衛星データを入力すると30%まで低下した。衛星データの調整を行うことで60%まで向上させることが可能となり、栄養塩や基礎生産との関係を解析できる段階となった。 以上の結果は水塊の混合過程を3次元的に明らかにするツールとなり、同時に広範囲の水塊分布の解明につながる。また、栄養塩データと水塊の関係を解析し、基礎生産データと比較することで、高基礎生産力を生み出す水塊の消長と海氷等の関係を推察可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた基礎データ取得のための観測が2年連続で中止となり、沿岸付近のデータを取得するに留まっているため。
|
今後の研究の推進方策 |
当初予定の観測は実施できなかったが、別の調査船による観測や過去のデータを利用することで研究を遂行する。また、水塊推定アルゴリズム構築のデータを多数得ることは困難であるが、衛星データの調整(チューニング)により、比較的良い精度を得ることが可能となったため、その方法を利用して研究を進める。水塊分布の不確実性は入力値のエラーに対する感度分析により評価する。本研究で得られる水塊の消長傾向と経年変動を基礎生産力に加え、海面水温や海氷等とも関連付けて解析する。関連付けるための衛星データはすでに取得済みである。
|